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サロメ

 19世紀サロメ図像には、エジプトに対するオカルト・オリエンタリズムの影が色濃く見透かせる。
 まず、エジプトで行われているとされた「蜜蜂の踊り」。早い話がストリップだ。当時の俗流新聞にはこのようなエジプトイメージが氾濫している。
 サロメ図像は、その源流を遡れば19世紀神秘主義と根を同じうすることが見える。神智学協会設立の年1875年はモローが上述の図像でサロメ作品を描き、フランス全土で異端的カトリックが猛威を振るった年号に他ならない。そして三者ともエジプトの肥沃なイシス幻想を根底に持つ。
 神智学協会とサロメは言わずもがな。異端的カトリックは?是れは聖母信仰を色濃く印象付ける。そして聖母信仰の一つの源流としてイシス信仰があるは明らかだ。言わばこの時代の精神とはオリエンタリズムの視線のもとで見られた東方より流れる魔術の風であり、博物図譜の流行とそれに追随する観光に依るものなのだ。


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