世界は欲しくないものに溢れている
「なんでもいい」世の男性たちはそのキラーワードによって誤謬を犯す。
なんでもいいは、なんでもよくないのよ!そんな風に妻から突き上げを食らってないだろうか。「あ~もうオトコって役立たずね!」「メニュー考えるところから料理なのよ!」という男子ポンコツ認定をうけ、本日の業務は終了となる。
たぶん実際本当になんでもいいんだろう。カレーと言えば「この前作ったばかりだから」とか、かつ丼と言えば「油物は高カロリーで身体によくない」だとか、ソーメンと言えば「栄養が偏っている」だとかの激しいリバウンドをくらうのが怖いだけなんだろう。
水の次に人類に欠かせないあずきバーを切らしていたならコンビニに走るし、飢餓の危機を感じたらウーバーでスタバのあんバターサンドをオーダーするが、「どうしても」以外は「どうでもいい」「何でもいい」が正直な感情なんだと思う。
選択肢やものが多すぎて、僕らは本当に必要なものが分からなくなっている。どうでもいいメンバーと飲む酒、どうでもいいテレビ番組、どうでもいい情報、どうでもいい100均の便利グッズ。
僕にとっては「どうでもいい」「なんでもいい」で溢れかえった世界。
引き出しすら整理できない僕に、この中から本当に必要なものを探せだなんて無理難題だ。要るか要らないかを考える時間すら苦痛だ。
だから、大切なものだけ「なんでもいい」以外の必要なものだけを傍に置く。
迷うと溢れる。いつかいつかに縛られる。
執着は捨てる。
今の迷いも、今は必要のない未来への不安も。
大切なものだけが手の届くばしょにある生活。
手放しすぎて、テレビと椅子ひとつ、という寒々しいリビングになった。
ラグジュアリーなのか詐欺師の事務所なのか見分けがつかなくなった。
これで、いいものなのか。
けれど、迷って、その迷いは手放すことにした。
(276日)