三月うさぎの~緊急事態に酒愛を⑮
誕生日の祝い方ってものがモヤモヤ。実際、誕生祝メッセージをいただくことは嬉しいし、まあ365日のうち1日しかないので、一年中で一番愛着がある一日なのだということは認める。だが「ホントはどーでもいいんだけど、一応のマナーだし、みんなそうしてるし」みたいな定型文が見え隠れしていて、見えちゃって素直になれない自分も嫌で、FBとかでも公開を止めた。じゃあメッセージが無いから悲しいかというと、さほどでもない。一応、気持ちの上では、頑張ってくれた母と周囲の皆様に感謝をする日と決めているので。
中には盛大な誕生会を所望する人もいる。ある時から参加を余儀なくされたこの誕生会だが、実行委員会を立ち上げなくてはならないほど大がかりな会だ。予算が決まっていて出資者は祝ってもらう本人という、なんともミステリアスな会だ。キャバ嬢か。僕にとっては捜査本部の戒名書きたいくらいに胸焼けするイベントだ。当人の食べ物の好みから酒の好み、サプライズ的な何かとかプレゼントをどうするかとか召集するメンバーのセレクトとか、クリアしなくてはいけないことが山積みだ。チッと心の中で舌打ちしてみるものの、この日本中のサラリーマンに重くのしかかる同調圧力に抗うすべはなく、めっそうもございませんお奉行さま勘弁しておくんなさいまし仕事道具を取り上げられちまった日にゃあ釜の蓋が開きません何卒ご勘弁を。
サラリーマンの「僕は僕で生きていく」憲章のなんと脆く儚い事よ。
店を予約する。日時人数と苦手な食べ物と予算と、あとワインにうるさい人だったなあ。
とりあえず過去の実績を調べ、昨年と同じような状況は避ける感じで店は押さえた。
「店はオッケーです。プレゼントとかどうするんですか~」
「あ、それは毎年同じものだから気にしなくていいよ。」
「花とかですか」
「電気シェーバー」
なんだそれはと首を傾げたが、聞けば、髭が濃すぎてまっとうな使い方をしても本体が一年しかもたないのだそうだ。そういえば昼休みには洗面所で必ずあてているし、十分なチャージをしても髭剃り中にシェーバーのモーターが止まるという都市伝説的な噂話を聞いたことがある。おもしろい。僕はこの胸焼け誕生会にほんの少しだけ楽しみを見つけた気がした。
~この切れ味がいいねと君が言ったから今日はシェーバー記念日~
まあ、面倒くさいのはこの人くらいだから365分の1くらいはガマンすっか。