人生ハズレくじ無し

ビンゴが嫌い。金さえかければ工夫のいらない手軽なゲームだということは認める。北海道旅行ペアチケットとか、冷凍カニとか、商品券とか、はやりの小型家電、アイドル写真集まで。ちょっとしたドン・キホーテ並みの夢の賞品たちが用意されているのだ。盛り上がらない訳がない。だが、僕は宴会の終盤に必ず登場する、この謎のイベントを心から楽しんだ記憶がない。なぜならとにかく清々しいほど当たったためしがないからだ。負け惜しみと思ってくれてもいい。上等だ。

「悪い。今日は帰るから。俺の分やるから開けといて。賞品半分よこせとか言わんから、わははは。」
部長が席を立ち、僕に自分のカードを手渡す。うぬぬぬぬ。ストレスが倍だ。
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コンゴ、リンゴ、ドワンゴ。まだかよー。援護、珊瑚、黒珊瑚、白珊瑚、天声人語、６面待ちまできたか。きび団子、みたらし団子、肉団子、草団子、泥団子、いけねえいけねえ団子縛りにあっている。そういえば熊本にいきなり団子ってあったなあ。あのネーミングはどうかと思うな。というンゴで終わる脳内セルフゲームをやっているうちに、部長の置いていったカードと合わせて13面待ちって！誰の陰謀だうらぁ！
「あれ？ビンゴまだのかたは～？はーい、賞品あと少しですよ～。がんばってねお兄さん！さあて次の番号は～」
幹事は柳生ばりの名司会で場を盛り上げようとする。やらしいフォローをしなくていい。僕にかまうな。18だ18を出せ！
「で～は～次の番号は。とぅるるるる～18です！」
うっそまさかえええまさかうっそ二枚ともビンゴなの～～～？！
へ～え？そうなの～？全然気にしてなかったけど、当たっちゃった？しかも２枚とも？いやあ別に賞品とか欲しくないし興味ないけどまあ皆で盛り上がってるとこ水を差すのもなんだし、ふうっ仕方ねえなここは大人の対応で手を上げておくか。という下手な小芝居を打ち静かに立ち上がる。

「えっと～、２枚とも、ビンゴしたっぽいっす。」

「はい。20位と21位ですね！おめでとうございます！賞品はコチラですっ！」

罰ゲームかよ

僕は週末の超絶混雑する中央線でトイレットペーパー12ロールとティッシュペーパー五個入りを抱えた大迷惑な客と化した。

くっそー。週明けにこいつで幹事と部長をぐるぐる巻きにしてやる。と決意したものの、週明けのラッシュ時に再び迷惑な客になるのも負け犬感ハンパないので、普通にクローゼットにしまい普通に消費することにした。

やはり欲しいものは自分で選びたい。

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