犬の喋る世界なら…
「僕の名前ですけど。『マカロン』とかキラキラネームつけちゃってますけどね、ブームの後を考えましたか。名前が一生背負うものを想像できない人間は愚かだと思うんですよ。僕がジジイになって病院にかかって診察室へ呼ばれるときも、薬袋に書かれる名前も、愛犬手帳の欄にも『マカロン』なんですよ。それに僕はオスですよね。」
「はあ、すみません…ええっと、改名しますか?」
「家庭裁判所の許可は必要ないとしても、ご近所さんにどう説明するつもりなんでしょうか。」
「ですね」
「名前のことは、後々議論いたしましょう。それよりお腹がすきました。この前のカリカリフードは驚くほど口に合わなかったので、もう少しランクの高い商品にしていただけませんか。」
「でもこれ、ワンちゃん大満足って、データもほら、パッケージの裏側に。」
「盲目的にデータを信じると痛い目にあいますよ。平均値や中央値は中学生の数学で学びませんでしたか。サンプル数も曖昧だし、きちんとした根拠を示してください。知識の薄い貧乏人は資本主義の食い物にされて人生終わりますよ。じゃあ、散歩にでかけましょうか。」
「・・・・・」
見るはずのなかったヤフコメを、うっかり目にしてしまった時のような虚脱感。
他人と過去は変えられない。
自分と未来を変えるしかない。
そんなコトバは耳にタコができるほど聞いてきた。
上司だったら諦めがつくのに…
職場は仮面を被って過ごしても、給与の出どころだと思えばいいが。
「じゃあな。」
ガラス越しのキャバリアキングチャールズスパニエルに手を振った。
(そもそも犬種名すら覚えられんし…)
きっと世界は、見えなくても聞こえなくてもいいものでいっぱいなんだろうな。
(299日)
#エッセイ #コント部 #ライフスタイル #僕なりの幸福論 #毎日note #見えなくてもいいもの #聞こえなくてもいいもの
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