多様な依存先が自立と安定と安寧をもたらす
■先日、
『誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』
という本を読んだのですが、この中に
【自立とは多様な依存先があること】
という言葉が紹介されていました。
■示唆に富む言葉ですね。
自立とは、
「依存しない」
ことではなく、
「多様な依存対象がある」
そんな定義が与えられているところが
気になりました。
■たしかに、
依存している対象が一つであれば、
その対象との関係が消滅すれば
【頼れるものが何もなくなる】
こととなります。
依存している対象はさまざまで、
「夫(あるいは妻)」
「親(あるいは子)」
「自分の健康」
「所属している組織」
「預貯金をはじめとする資産」
「未来に期待している退職金や年金」
「自分の専門性」
「帰属している国家」
など、いろいろありそうです。
■それぞれ確かに
【頼れるものであるならば心強い】
対象ですが、
逆に、全力で頼ってきたものが
あるとき、突如として失われたら、
意識的にであれ、無意識的にであれ、
それ一つに依存してきた分だけ、
衝撃は大きくなるものです。
■また、それが予感されるから、
「単一のなにか」
に依存していることに気づいている人は
つねに
【喪失感や不安感や恐怖感や焦燥感を
内在させている】
ことともなるのでしょう。
■極端な話、
【単一の依存対象
(夫や妻、勤務先、預貯金、能力等)】
の存続を信じていたにも関わらず、
(本当のところは、それが失われるのは
恐怖だから、
喪失可能性の存在について、見て見ぬふりをする、
ということも往々にしてあろうかと思われ)
ある時、本当にそれが失われたとき、
そのまま
【一切の人生、生活の下支えが喪失される】
こととなるでしょう。
これは恐怖です。
■だからこそ、自立した生を志向するのなら、
(語義的には、一見矛盾するようにも思われる)
【依存対象】
をできるだけたくさん増やし、
さらには深め、
【一撃で(人生や生活を)詰まされる】
ことのないよう、備えておかねば
ならないのではないでしょうか。
■そういえば、先日、
<定年後 50歳からの生き方、終わり方>
という本を読みました。
私(鮒谷)自身は、もう、
「定年退職を迎えたくても迎えられない、
死ぬまで働き続ける人生」
を選んでしまったので(汗)
ここに記されていることは
ほぼ自分の人生とは関係ありませんでしたが、
この本には
【金銭的にも人間関係的にも精神的にも、
所属企業に(単一)依存してきた、
定年退職を迎えた人たちの行く末】
が赤裸々に記されていました。
(私がいうのもなんですが、特に
「終身雇用系の会社」
にお勤めの方は、将来のイメージを作って
おくためにも、一読されるとよいのでは)
■この本にたくさんの、
退職経験者の事例(?)が出てきますが、
何十年かけて培ってきた
「帰属してきた会社への依存」
からは簡単には離れられなくて
【退職後は悠々自適で、
と言っていたにも関わらず、
落ち着かず、やることもなく、
その状態そのままがストレス】
となってしまう人が多いという話は、
なんとなく分かるような気もしました。
■さらに今は
【長生きリスク】
(長生きすることが寿(ことほ)がれない、
悲しい言葉ですね)
と言われるように、備えておかねば
【貯金+退職金+年金を徐々に食いつぶし、
長生きするほど
「老後破産」「無縁死」
が近づいてくる】
という危険性まである、と言われます。
■リンダ・グラットンの
を読まれた方も多いと思いますが、
私も含めて、
【100歳まで生きることを前提として、
人生設計を行う必要がある】
そんな時代に生きていると考えたほうが
良いのかもしれません。
■一般的には、歳月を重ねるごとに
【依存している対象が失われることが
増える傾向がある】
ようにも思われ、
(たとえば肉親や友人知人の死去、
自身の健康、金銭、
AIの進展で専門性も危ないし、
医療費高騰、インフレ亢進や、
最終的には国家による棄民も怖いですね)
だとするならば、
【平時において、できるだけ前倒しして、
いかに多種多様な依存対象との
関係性を構築&深化させておくべきかが、
人生を詰まされにくくする、
現実的な解となってくるのではないか】
そんな風にも思われます。
■こうして時間をかけて積み上げていくべき、
「たくさんの依存すべき対象」
こそが
【無形資産】
ということになるわけですが。
■最後になりますが、
GEのジャックウェルチは
「社内の既存の事業部をつぶすつもりで
『アンチ事業部』をつくれ」
と言ったといわれます。
この考えを自分の人生や生活に引き当て、
見たくない現実を直視し、
【自分の人生や生活を「破滅」させるには
どうすればよいか、との道筋をあえて考え、
そのリスクを一つづつ潰し、備えを万全に】
しておくことこそが、
逆説的ではありますが、
【「安心、安定、安寧、平穏の精神状態」を
手に入れるために必須のプロセス】
となるのではないでしょうか。
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