海軍少佐 都所 静世
回天特別攻撃隊
昭和20年1月12日
ウルシー海域にて戦死
群馬県吾妻郡原町出身 21歳
蒸し風呂の中に居るようで、何をやるのも億劫なのですけれど、優しい姉上様のお姿を偲びつつ最後にもう一度筆を執ります。
三十日の一七〇〇、豊後水道通過、迫り来る暮色に消え行く故国の山々へ最後の決別をした時、真に感慨無量でした。
日本の国というものが、これほど神々しく見えたことはありませんでした。
神州断じて護らざるべからずの感を一入深くしました。
姉上様の面影がちらっと脳裏をかすめ、もう一度お会いしたかったと心のどこかで思いましたが、いやこれも私心、大義の前の小さな私事、必ず思うまいと決心しました。
艦内で作戦電報を読むにつけても、この戦はまだまだ容易なことではないように思われます。
若い者がまだどしどし死ななければ完遂は遠いことでしょう。
生意気のようですが、無に近い境地です。
攻撃決行の日は日一日と迫って参りますが別に急ぐでもなく平常です。
太陽に当たらないのでだんだん食欲も無く、肌が白くなってきました。
今、六日の〇二四五分なのですが、一体午前の二時四十五分やら、午後の二時四十五分やらとにかく時の観念はなくなります。
姉上様、もうお休みのことでしょうね、今総員配置につけがありました。
ではさようならします。
姉上様の末永く御幸福であります様、南海の中よりお祈り申し上げます。
一月六日 静世
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