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「平均」が覆い隠しているもの
ども、全地球の皆様あけましておめでとうございます。
人呼んで「謎作家」、船沢です。 m(_ _)m
さっそくですが、先刻LinkedInにて投稿した私の記事を、今回特別にnoteでもシェアいたします。
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定量調査で気をつける点は、平均値で判断することです。その典型例が貯蓄額の平均値です。2022年厚労省の『国民生活基礎調査』を例にすると、世帯主が65歳以上の高齢世帯の平均貯蓄額は1,625万円となっています。こんなに多額の貯金を多くの高齢者がしているのかと思うはずですが、ここに盲点があります。
(中略)
こんな場合は、中央値を参考にすればよいと、社会教育学者の米田敏彦さんが指摘しています。前述した2022年の『国民生活基礎調査』のデータから、高齢世帯の貯蓄額の中央値(累積%値=50)を計算すると700万円になり、平均値の半分にも達していません。平均値と中央値がかけはなれているのは、それだけ格差が大きくなっているわけです。実態を把握する際には、平均値だけでなく、中央値を見ることが重要なことがわかります。
No.91「平均は格差を隠す」
母集団や推移の統計において、全体の“真ん中”を表現する値=代表値はいくつかの種類がある。
一般に良く用いられるのは「平均値」だが、意外と知られていないのが「中央値」や「頻出値」だ。これら三者は似て非なるものであり、まるで性質が異なる。
統計については中学や高校の数学で習う(習った)はずなのだが、どういうわけか平均値以外の指標は我々日本国民の頭からすっかり抜け落ちている模様である。これでは数字のレトリックに騙されるのも仕方ないだろう。
平均値(average value)とは「各標本の全ての数値を足し合わせ、標本数(sample size)で割った数」である。文字通り、標本の値の高低差を「平ら」に「均(なら)した」計算結果のことだ。
統計調査は大規模な実勢調査と違い、必ずしも標本(サンプル)数が多ければいいわけではない。一定量を超えると平均値はほとんど差がなくなるため、基本的には200〜5000件程度もあれば有意な統計結果が得られるとされている。
これに対して中央値(median)とは「標本統計の最大値と最小値の中間点=順位が中央の値」をいう。例えば標本数200の場合、昇順または降順に整列した標本の第100位および第101位が中央値である。
そして頻出値(mode)とは「統計分布における頻度の最大値=グラフの“山”の一番高い点」を指す。例えば左右対照的な山型の曲線を描く正規分布グラフにおいて、その頂点となる頻出値は中央値におおむね近似する。
重要なのはここからで、平均値とそれ以外の代表値は必ずしも近似しない。それどころか、平均値がすでに「母集団の実態を正確に反映していない」例すら往々にしてある。
これは中央値に対する最大値または最小値の偏差が大きく、かつ平均値が中央値や頻出値から著しく乖離している状態において見られる現象だ。したがってこの場合の平均値は「母集団における一般的な実像」や「母集団の総意」を正確に表現できていないことが伺える。
つまり、この「実態に伴わない平均値」を元に経営・販売方針や政策を決定してしまうと、誰の得にもならない全くの的外れな施策が実施されたり、そのしわ寄せで却って状況が悪化したりする可能性が高い。
より端的にいうなら、平均値だけで世相や民意を“知ったつもり”になるのは危険な発想だ。それは多面多様な物事の中のほんのたった一側面を、一つの視点および視座からしか見ていないのと同じことである。
定点観測だけでは「周囲が動き、変化している」ことはわかっても、「実際は自分自身と今の場所もまた同様に動き、変化する」事実を見落とすことが多い。観測者Aから見た観測者Bは「数多の動く星の一つ」に見えるが、同じように遠く離れた観測者Bも観測者Aのことをそう思っている。
だから一つの指標を鵜呑みにしたり、単一の情報源あるいは自分自身を絶対視するあまり、本質や全体像を見誤ることは厳に戒めなければならない。要はそういうことだ。
というわけで、2025年も船沢荘一と「未来制作所イフリート」をよろしくお願い申し上げます。\(^o^)/
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(アニメ『私、能力は平均値でって言ったよね!』より)
©FUNA・亜方逸樹/アース・スターエンターテイメント/のうきん製作委員会
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