マイクロ業務におけるChatGPT活用アイデア:漢字の読み方リスト作成から考える作業負担軽減のありかた
私は専門学校の講師もやっており、そのうちの半分くらいはアジア各地の留学生向けの授業である。そのなかでパソコン検定対策講座をやるうえで、教材のルビうち問題というものがある。
まめな先生なら、過去問や問題集に手書きでルビを書いた資料を配布する。
誤解も何も恐れずにぶっちゃけると、私はそのような作業に手をかけたくない。その作成にかかる時間は「個人の裁量でやった」無賃労働になるからだ。別にやれと指示されているわけでもないのだ。でも必要っちゃ必要なのだ。why Japanese people!!である。ともかく限られた時間をそうした業務に費やすのは避けたい。ほかにやりたいことも、頼まれている(待たせてしまっている)こともたくさんあるからだ。
とはいえ、教材としてはやっぱりあったほうがいい。そこはわかる。
そこでchatGPTを使って漢字の読みデータの抽出ができないものか、という発想に至ったというわけだ。
そういう「AIで代替できる作業を見つけて、実際に行う」発想があるか、ないか。これがDXともいえるわけで
DXとはITツールの導入を指すだけにとどまらず、組織や働き方をデジタル発想に置き換えていくという人間側の変革も含めた概念である。
その定義から言えば、定型業務をAIに代替させて労働コストの軽減を図るという「発想」を持っているかどうかはDXの浸透度合いを示しているといえる。
「それって生成AIでよくない?」「chatGPTにどのようなプロンプトを送れば欲しいデータが得られるか」「抽出されたデータの妥当性を判断できるか」といった会話がなされるチームであれば、よく浸透しているといえる。
ところが少なくとも私が観測している狭い範囲ではそのような光景は確認できなかったので、おそらくその組織で実務的にchatGPTを取り入れるアクションを起こしたのは私が最初だと思う。乗るしかないこのビッグウェーブに!と騒いでいるのは私だけだった。
漢字の読み方リストの作成事例)
以下、実際に漢字の読み方リストをChatGPTを用いて抽出した手順を紹介する。
画像認識には時間当たりのリミットがあるので、事前にGoogleKeepでテキストを抽出
ChatGPTは画像認識してかなり適切にテキストを抽出する能力を有していることが分かったが、無料版では処理枚数に時間ごとの制限がある。
そこで、事前にGoogleKeepで画像のテキストおこしを行った。
抽出されたテキストをChatGPTに張り付け、プロンプトを記入
これで出力されたのが下記のようなものだ。
以下は、指定された文章から抽出した漢字とその読み方を示す2列のテーブルです。
| 漢字 | 読み方 |
| ---------- | ------------------- |
| 子供 | こども |
| 友人 | ゆうじん |
| 家 | いえ |
(編集注:途中省略)
上記は全ての漢字をリストアップしたものではないですが、抜粋して表にしました。他に必要な漢字や読み方があれば、お知らせください。
もちろんブラウザ上ではもっと見やすいテーブル標記になっている。
しかし、このままではオフィスソフトに張り付けてもご覧のようなソースまんまのテキストのままだったので、改めてHTMLで出力するように指示。
以下は、先ほどの漢字と読み方をHTMLのテーブルで表示するコードです。
```html
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>漢字と読み方</title>
<style>
table {
width: 50%;
border-collapse: collapse;
}
table, th, td {
border: 1px solid black;
}
th, td {
padding: 8px;
text-align: left;
}
th {
background-color: #f2f2f2;
}
</style>
</head>
<body>
<h2>漢字と読み方</h2>
<table>
<tr>
<th>漢字</th>
<th>読み方</th>
</tr>
<tr>
<td>子供</td>
<td>こども</td>
</tr>
<tr>
(編集:以下省略)
上記のソースを丸ごとコピーし、Excelにペーストしたら使いやすいテーブルが完成。
・・・という一連の作業を同僚に実演したら感動していた。それだけ、この業務は煩わしく、手間なのだ。
生産性アップの見返りがなければそもそもやらないというDXの心理的落とし穴
我々非常勤講師は一コマいくらで働いているので、生産性は重要である。だからこのような作業コストの軽減策はどんどんやっていきたいと考える。あくまでも一般論だが、これを月給制の立場で考えると、余計に仕事を増やされるのではないか、といった懸念がこのような発想にふたをする方向に働く。
いわゆるカイゼンのように、足の向き、工具の持ち方まですべて詳細にコントロールされ、マニュアル化されていくのがある意味では究極の最適化であるが、やる側からするとどんどん高強度の作業が高密度になっていくわけで、実際それに協力するとしんどくなるというのではAI活用のようなアイデアも役に立たない。
AIの利用も人間にとってメリットがあり、より快適で豊かな生活のためにあるという原則をしっかり押さえたうえで、マイクロ業務のコスト軽減策にAI活用というアンテナを張っていきたいものである。