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懲役ダイアリー 2017年4月24日月曜日 『VIVA!職業訓練!販売士へGO!』

ドキドキ・・・ワクワク・・・。

島根あさひの受刑者はこの日をそわそわしながら迎える。

そう・・・

今日は職業訓練の入れ替えの日。

数ヶ月前に職業訓練の希望申し込みをして、その結果が言い渡されたら即職業訓練を受けるユニットへ移動の日なのだ。

島根あさひの職業訓練は刑務所界隈の中でもトップクラスの訓練数で、様々な訓練があり、社会で役に立つ資格が取得できる。

介護職員初任者研修修了者

販売士

玉掛け

ホイールローダー

小型移動式クレーン

エクセルやワードの検定

パン作りを学べる職業訓練

医療事務

CAD

盲導犬を育てるパピープログラム


音訳や点字といった社会貢献プログラムなど多種多彩だ。


私はその中から、今回は販売士の職業訓練に申し込んでいた。

販売に関しての基礎知識、簡単なマーケティングや接客などの勉強ができるとのことで出所した時の自分を見越してこの職業訓練を選んだ。

ドキドキしながら待っているも・・・午前中は特に何もなく・・・。

お昼ご飯の時間になった。とある受刑者が私話しかけてくる。

「funaimさん職業訓練なんか出してます??」

「販売出してます!でも行けるんすかね・・・。」

「多分真面目だから職業訓練行けますよ!!俺はバツ(懲罰)やっちゃったし、職業訓練多分いけないっすね!!ちなみに、昼飯後の運動時間にオヤジが回ってきて言い渡しが始まるっすよ!行けるといいっすね!」

5類のオレンジバッジの人だけど・・・たまに話す人でとてもいい人。刑務所はバッジの色で人を判断してしまいがち。特に5類(オレンジバッジ)、4類(イエローバッジ)は何か違反を起こしているので要注意なのだが、全員が全員悪い人ではないと感じていた。


運動時間になると部屋の小さなスピーカーから流行のJ-POPがまるでアナログレコードを流すかのような音で流れ出す。

星野源さんの「恋」

RADWINPSさんの「前前前世」

WANIMAさんの「やってみよう」

明るい曲ばかりでテンション上がりながら腕立てや腹筋をして身体を鍛えていたら・・・突然部屋のドアがガチャッと開いた。


「称呼番号!氏名っ!!」


そこには担当のオヤジではなく、通称「金線」と呼ばれる偉い刑務官の方が立っていた。額の汗をぬぐい、慌てて体勢を起こし刑務官の前で直立不動した。

「2716番!funaimです!」

私は元気良く自分の称呼番号を名前を告げた。

「funaimは販売士な!訓練室は3−C!準備しておけ!」

よっしャァァァァァァァぁぁぁぁ!!!!販売士いけたぜ!!

一般工場へ配属されて4ヶ月、初めての職業訓練に行くことができた。心から喜んでいると小さなスピーカーからは大好きなPerfumeの曲が流れてきた。なんて素敵なタイミング。未来は明るい!

「職業訓練に出る者は自分の称呼番号が書かれたスーツケースを各自ホールに取りに来るように!」

担当のオヤジのアナウンスが入り、黒い大きなスーツケースを受け取り、部屋の中にあるすべての荷物をスーツケースに詰め込み、部屋の外へ整列した。

今回職業訓練に行ける受刑者はこのユニットからは私を含めて9名だった。

そこには5類のオレンジバッジの人の姿はなかった。

私たちは「職業訓練入退所式」のため一度体育館へ移動。

「前回の職業訓練では180名の参加者のうち、10名が懲罰になっている。君たちは選ばれた人たち。勉強する気があって申し込みをしたと思っている。職業訓練に参加したくてもできなかった人間もいる。だからくだらないことで調査、懲罰にならないように。またここにいる全員が次の退所式に参加できるように願っている。」

お偉い刑務官の温かいお言葉をいただき、その後職業訓練が行われるユニットへ移動した。

移動中に驚いた光景があった。慣れた受刑者だろうか・・・布団に敷くシーツを袋のようにして、そのシーツで作った袋の中に色々な自分の荷物を詰めてサンタクロースのように担いでいる受刑者を多数見かけた。刑務官は黙認しているようだった。これって物品不正使用じゃないのか・・・と思ったが、特に問題もなさそうだったので私も次の移動からこれをやろうと決めた。

全員が3−Cユニットへ到着し各自荷物を整理し、販売士担当のオヤジからこのユニットについてのルールの説明があった。ルールが前にいたユニットと全く異なり、まるで勝手が違う。戸惑うことばかりではあったが、早く馴染むしかない。


夕食後の余暇時間。


多目的ホールのテーブルはあっという間に受刑者で埋め尽くされた。周りを見渡してみると、同じユニットから来た仲良しメンバーで固まっている。

私が以前居たユニットのメンバーは部屋から出てこず・・・。どこかのテーブルに話をしに行くのもなんだか気がひける。

私はおとなしく部屋へ戻り、いつものように勉強に励んだ。


今日は1日あっという間に終わってしまった。明日から新しい日々が始まる。楽しもう!前向きに!

しかし・・・

まさか・・・

販売士は事件の宝庫だということは

この時全く予期していなかった。


全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。




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