懲役ダイアリー 2017年8月3日木曜日 『1冊目の懲役ダイアリー終了』
ミンミンゼミの鳴き声が、暑い夏の日をさらに熱く感じさせる。
島根あさひの夏は暑い。特に作業のない日の居室内は地獄。窓を開けても風がない日は蒸し暑く、まさにサウナ状態。本を読むだけでも汗だくになり、さらに頭がぼーっとしてくる。ほぼ熱中症になりかけている状態。これではいつまでたってもととうはずもない。
ふと外を見渡すと、居室の窓に巣を張る蜘蛛。ひと月前は小さな蜘蛛だったのにいつの間にか大きな蜘蛛へと成長している。最初は気持ちが悪いと感じていたが、部屋に入ってくる虫を食べてくれるし、成長する姿を見ているとなんだか可愛く見えてくるから、不思議なものだ。
ある時、いつものように外の蜘蛛を眺めていたら、バタバタバタと何かが窓めがけて飛んできた。
小ぶりのスズメだった。
そのスズメは窓にいる蜘蛛を一瞬で口に入れ、飛び立っていった。
蜘蛛は部屋に入ってくる虫を食べ成長し、成長した蜘蛛ををスズメが食べてしまうという食物連鎖を目の当たりにした。
ある意味刑務所よりも過酷な環境だと感じた。
9月11日は刑務所の運動会があると告知を受けた。運動会、ちょっと楽しみだな。娯楽のない刑務所でこういうお祭り事は受刑者にとって何よりの楽しみになる。運動会なんの種目に出ようか考えよう。
10月23日から始まる職業訓練の案内も届いた。建設機械とデジタルコンテンツの職業訓練。建設機械に行ってみようかな。
昨夜ふと考えたことを書き留めておく。
20代前半の頃の自分。母や弟からもらった手紙に一切返事をせず、電話が来ても意図的に無視、実家にも帰らなかったことを急に思い出した。
恐らく母は心配してくれていたのだろうと思うし、弟は会いたかったか、一緒に遊びたかったのだろうなと今になって思う。
本当に悪いことをしたなって今は思うが、その当時の自分は父、母、弟の三人で暮らせばいい。俺がいない方が幸せなはずだと思っていた。私が高校を三年生で退学したのは父親と大ゲンカをしたことがきっかけでもある。その当時、父親は私のことは好きではないとずっと思い込んでいた。
口に出すことはしなかったが、実家に帰らない理由はそこにあったと思う。
この懲役ダイアリーの1冊目も今日で最後のページ。次は2冊目に入る。始めから読み返してみると色々なことがあったなとしみじみ思う。
色々なことがあったけど、この懲役ダイアリーが埋まっていくことで出所の日が近づいているのは事実。一日一日を大切に生きて、頑張っていこうと思う。
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。