懲役ダイアリー 2016年12月14日水曜日 考査2週目
「いただきます!」
朝食の小さなC食のコッペパンと野菜ポトフを一気に口に入れる。毎朝の光景。当然、むせる。詰められる人がいる。毎朝の光景。段々当たり前になってくるこの日常。異常だけど、正常。正解というものが何なのかよくわからなくなってくる。
ここで雑談。
C食というのは、刑務所の作業や、受刑者の身長の高さを基準にして決められる食事の量の事で、米の量やパンの大きさや量が変わってくる。農業など特に身体を動かす作業は特Aと呼ばれるもので、ご飯の量は多すぎるくらいの量になる。例えばパンならB食のパン2個となる。A食は約200gのパンが1個、約B食165gのパン、C食は約130gのパンの順に量が下がっていく。米も同じような感じだ。
なので、当然不平不満が生まれる。あいつの量は多いだの、ずるいだの。ご飯の量を多くするために、健康診断で身長を測るとき、靴下を3枚重ねて履いて身長を高くしようとする。大相撲の新弟子検査かよ。
今日から考査は2周目に入るため、部屋の移動があった。といっても居住スペースが3階から4階へ移るだけなのだが。荷物の移動が正直面倒臭い。正直、昆虫さんマークの引っ越し屋さんを雇いたかった。
移動した先の部屋の作りは変わらない。なので引っ越したからといっても変な違和感はないが、移動した先の部屋は埃まみれで汚かった。
考査の2週目、何もかもが変わらなければよかったのだが・・・大きく変わってしまった事があった。
刑務官の対応・・・
鬼のように厳しくなった。
「1週目に何を学んできたんだ!もとい!もとい!何回もやらすぞ!」
「声を出せ!腹から声出せ!」
「動きが遅い!運動の自由時間なくなるぞ!!」
必死でやっても文句だけ。声は枯れ、息が上がる。きつい・・・。
身体はヘトヘトで、夜の余暇時間に勉強どころではないくらい疲れる感覚。
それでも必死に喰らい付きついていった。
「お礼参り」という言葉があるが、この言葉をみんなが使いたいと思う瞬間ではないかと感じた。
これは、後から聞いた話だが、実際刑務官もお礼参りには正直ビビっているということも仲良くなった刑務官から聞いた。
運動時間、必ずといっていい程誰かがどこかで揉めてる。誰かが文句を言われ詰められている。
いじめられる人はなぜいじめられるのかを考察してみた。
閉鎖的な空間の中で、異を放つ人間。見た目の美醜、動き、喋り方、食べ方、考え方が集団とはかけ離れた人間。空気を全く読まない発言をする。そのコミュニティに染まろうとまたは染まっている人を阻害する行為をする。こういう人が、俗にいう村八分的扱いを受けることになる。これは社会でも同じ理論なんだろうと考えた。全てを受け入れて、みんながみんな助け合って生きていけばいいのにと心から思った。
それから、受刑者とはあまり仲良くするのは得策ではないとも感じた。本当にちょっとしたことでトラブルが起きている。
「俺なんて懲役1年半っすよ!やってらんねえっすよ!」
こういう事を懲役7年の受刑者に言い放つ。
そりゃトラブルも起こるだろ・・・。
法的に正常な異常な空間の中で、私は生きていく。ここへ来てまだ12日。満期まであと4年11か月。先行き不安でどうしようもない日々は、まだまだ終わりが見えない。
必要以上に交流を深めず、人にはあまり関わらない。それが刑務所で暮らしていく術だと感じた。俺は俺だ。人には流されない。そう決めた瞬間でもあった。
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。
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