懲役ダイアリー 2017年4月20日木曜日 『Letter from my son』
「あ〜まじこんなクソみたいなところさっさと出たいわ!!飯はまじい、お菓子は食えねぇ、女はいねぇ。まじつまんねぇよ!イライラするわ!!」
他の受刑者のこういう言葉を聞いていると、こっちが無性に腹が立ってくる。
刑務所内での一般工場では職業訓練の一環として様々な講義が週一回平日の午前中か午後に行われている。その時に色々なビデオを見せられる。私が腹が立ったのはそのビデオを見せられた直後だったからだ。
ビデオの内容は、世界の貧困地域の現状という内容。ゴミを漁り、濁った水を飲み、風呂はなく川で水浴びをする。衣食住が保障されているわけでもない。教育もない。仕事もない。劣悪な環境に罪もない人たちが住んでいる。
なのに・・・刑務所にいる犯罪者の私たちは、罪もない貧困地域に住んでいる方々よりもはるかに良い暮らしをしている。
ご飯は三食暖かいものが食べられ、服を着て、教育まで受けられて、一人一人の個室でテレビ、ベッドがあり、作業をしていれば多少なりともお金だって手に入る。何にも不自由のない生活をしている。
私たちは本当に罰を受けているのだろうか・・・。
これは罰ではないのではないか・・・。
色々と考えさせられたから、あんな言葉を聞いていると無性に腹が立って仕方なかった。今の現状に感謝をしなければならない。また改めて思った。
刑務所にいるといつの間にか自分がメモ魔になっていることに気がつく。くだらないことから、人への文句、ちょっとした情報、自分への戒めの言葉まで様々だ。
「何をするにしてもハードルを下げておくことが大切。謙虚に」
「単行本願箋を2枚もらう」
「広瀬すず写真集 17歳のすずぽん」
「ちょっとした事でキレるのは懲役病。絶対になってはいけない」
「くだらないことで怒るな、心を広く持て、俺は俺のことをやれ」
こんなことを日々メモしている。それが役に立つ時がくるのかはわからないが・・・。
手紙が届いた。封筒の後ろを見ると、妻の名前と連名で子供の名前も書かれていた。作業が終わり、夕食後早速封を開け、中に入った手紙を取り出した。その手紙を開くと私の目に拙い文字で書かれた文章が飛び込んできて、その瞬間涙が出ていた。
おとうさん、おかあさんへ
おともだちいっぱいふえたよ
ぱぱもはやくもどってきたらいいね
しょうがっこうでも
なわとびはやくごうかくするよ
子供が幼稚園の卒園式の日に書いた両親への手紙だった。
次の日には同封されていた写真も刑務所での検査が終わり私の元へ届いた。
笑顔で空手着を着た子供が写っている。それを見た私はこう思った。
子供・・・大きくなったな・・・。
最後に顔を見たのは昨年11月。そこから5ヶ月が経つ。たった5ヶ月で顔つきや体つきも変わっていた。
子供の成長は早い。
成長を間近で見られない・・・成長の瞬間はもう後になれば見られない。
懲役の本当の辛さというのは、
セックスができないことでもなく、
焼肉や寿司が食べられないことでもなく、
お酒が飲めないことでもなく、
お菓子が食べられないことでもなく、
時間が奪われること。
時間は巻き戻せない。
出所しても子供のその時の成長を見ることはできない。
大切な人との時間を共有できないことこそ。
懲役の本当の辛さなのかもしれない。
だから今ある時間を大切にしなければ・・・。
待ってろよ!
パパは必ず成長して帰るからな!
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。
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