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懲役ダイアリー 2017年4月9日日曜日 『HONne』

「きぇえええええええええええええっ!!!きぇええええええええっ!!」

緊急事態発生!緊急事態発生!島根あさひに謎の怪獣が出現・・・。

ゴジラのテーマ曲が頭の中で流れ出しそうになったが・・・


違う。怪獣ではない。


多目的ホールで奇声を上げたやつがいた。


今でも私に散々ケチをつけてくる・・・


そして小さな声で私に対して奇声をあげる・・・


いっこく堂だ。(本物のいっこく堂さんゴメンなさい。あくまで似ている人の仮名です。)

他の受刑者と揉めていた・・・。

そして今日は・・・


めちゃくちゃ大きな声だった。


普段からこの声の大きさで整列の時番号を唱えればいいのに・・・。


そしたら刑務官に声が小さいって怒られないのに。


奴のおかげで刑務官がホールへやってきて、次に何か問題が起きたら多目的ホールの閉鎖とするような指示を受けた。


マジ迷惑。


最近、この男が私の夢の中にも出てきて奇声を上げる。なんとも腹立たしい。


いっこく堂VSfunaimの第二ラウンドはもう懲り懲り。


それもまた刑務所の日常。


しかし娑婆の日常は全く違う。


先日は子供の小学校の入学式だった。


入学式当日。私はスーツを着用し、小学校の正門の前で入学式と書かれた看板を背に子供と一緒にアイフォンで写真撮影をしている気持ちになっていた。

しかし、実際は色褪せた薄緑色の作業着を着用し、カメラと刑務官に監視をされながら目の前に山積みになっているホッチキスの箱を黙々と組み立てる刑務作業をずっと続け、心の中でおめでとうの言葉を何度も何度も繰り返した。



今日から一年生だね。

パパは一緒にお祝いできないけれど、

離れていてもお祝いの気持ちを送り続けているからね。

パパが帰ってくる前も、帰ってきた後も、楽しい小学校生活を送ろうね。

本当におめでとう。



手紙にも認めた。



手紙といえば、他の受刑者に勧められた東野圭吾さんの「手紙」を読了した。

この小説は私に衝撃を与えた。

これからの受刑生活のあり方や、自分の身の振り方を考えさせられるような内容だった。

妻や子供は大丈夫だろうか・・・平然を装っているが、本当は夫、父親が犯罪者で刑務所に入ることが発覚して、手紙で私には平然を装って明るく振舞っているけれど、本当は辛い目や差別的な扱いをされているんじゃないか・・・。

色々なことを考えてしまう・・・。

加害者家族だから・・・。

義理の妹の結婚の件もそうだった。

家族は何もしていないのに、私のせいで犯罪者と同じ扱いのようなことをされる。私は人の人生を壊してしまっている。究極のクズ野郎だ。

心の底からどん底に落ちた気分だった。

そしてこうも思った。

ここにいる受刑者は果たして謝罪の気持ちを持って生活をしているのだろうか。

禁止されたお菓子や本の授受を平気で行い、

頭痛薬や睡眠薬を乱用して遊び、

将来のことを考えず漫画を読み、テレビを見て大笑い。

人に喧嘩を売り、いじめ、それをネタに談笑。

人に嘘をつき、騙し、

あいつがムカつくとか、こいつ臭いとか、

オヤジがうるさいだとか、

手紙が来なくてイライラするだとか、

仮釈放が少ない刑務所で最悪だとか・・・。

文句しか出てこない。感謝の気持ちがまったくない。

とても更生しているとは思えない。理性がなく感情だけで生きている人間ばかり。後先考えないでその場の感情で動くから犯罪をしてしまうのかもしれないが、それにしても酷い。

これが今の私の


「本音 HONne」



反面教師ではないけれど、今の現状を見て自分のことを振り返ると、若干ではあるが気が抜けてきた部分もあるように思えた。

もう一度気合を入れて戒めなければならない。

素直に誠実に真っ直ぐ生きる。嘘はつかずに、本音で生きる。

意識し続ければ、

いつか意識しなくても、

そんな人間になっているだろうと信じて。


全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。


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