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懲役ダイアリー 2017年3月12日日曜日『いつもの毎日時々スパイス』

天気は曇り・・・天気は晴れ・・・天気は晴れ・・・。

毎日毎日、こんな言葉から日記を書き始める。


いつもの日常の始まり。


刑務所へ来てから少し気を張っているせいで、眠りが浅いのかもしれないがやたらと毎日のように夢を見る。悪夢が多い。

部屋の布団を今よりももっと綺麗にたためるように研究する。

毎日のように筋トレをする。

マーガリンが美味しい。

妻からの手紙のペースが遅くなると心配になってくる。

他の受刑者に文句を言われる。

どれもいつもの日常。


いつもの日常の中では、様々な気づきも沢山あった。



常に自分の行動を振り返り見直さなくてはならない。

恐怖感は感じて良い。緊張しない人間はいない。

今できることを全力でやる。それが将来につながる

便りがないのは良い便り。

怒りは破滅しか生まない。

刑務所にアマゾン導入して欲しい。

言いたいことははっきりと伝える。


色々な気付気が毎日あって自分自身の行動に取り入れたいと思う。


時々スパイス・・・。

いつもの日常に時々スパイスがあると楽しみができて心が安定し、いつもの日常を頑張れる、楽しめる。当たり前なのかもしれないけれど、社会にいた時はこんなこと考えもしなかった。


一ヶ月に一度のお菓子の日。

食事のデザート。

購入した雑誌の配布日。

土日に放送される映画。

スパイスとはすなわち娯楽や楽しみのこと。

人間はスパイスのために生きているのかもしれない。

でも、スパイスだけだと生きてはいけない。何事もバランスが大切なのかもしれない。

こんなことを考えていた。


今日はスパイスの日。島根県浜田市の伝統芸能、「石見神楽」の慰問公演。天の岩戸の前で神々を楽しませるため、宇津女命(うずめのみこと)が舞い始めたという言い伝えがあるらしい。今回の公演は数ある演舞の中から「スサノオVSオロチ」の対決。

逮捕前は伝統芸能には全く興味がなかったし、見る機会もなかったが、こんなに面白いものをなぜ今まで見なかったのか・・・。自分自身に問いかけたいくらい心の底から楽しめた。

刑務所では絶対にお目にかかれない特殊効果で花火やスモークをバンバン使いながら、演者の迫力ある演舞と息遣いが私の精神を揺さぶった。

正義と悪の対決の見せ方って日本古来から変わらなくて、正義は悪に負けそうになるけれど、必ず奮起して最後に勝利する。子供とよく見に行っていた戦隊ヒーローショーにも受け継がれていると感じた。そして古来からこういう表現を人々は好むし、そこに興奮を覚えるんだなとも感じた。

寒い体育館で身体をブルブルと震わせ、姿勢を正し、久しぶりの娯楽を心から楽しむことができたし、心の中はとっても暖まった。

最近、なんだかすごく疲れていたけれど・・・体も心も休まった気がする。娯楽というスパイスは人を活気づける。受刑者をも。

いつもの毎日に時々スパイスあるだけで、人生が変わるんだ。

全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。


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