懲役ダイアリー 2017年2月26日日曜日 『ぱぁぱぁ・・・』
「プリン!プリン!プリン!」
「今日は大好きなプリンっ!!」
「早く食べたいプリン!」
子供ではない。
受刑者たちが騒ぎ出す。
私にとって刑務所に入って初めてのプリンの日。周りの受刑者は大騒ぎしている。そんなに騒ぐほどでもないと思うのだが、刑務所ではこういう些細なことがとてもありがたく感じて嬉しい。
うまい!!プリン!うまいよ・・・。涙が出そうだった。
でも・・・
案の定・・・
腹壊した。笑
しばらくプリンはいいや・・・と思うも食べたくなっても自由に食べることができない。それが刑務所。ちょうどよかったのかも。
刑務所には色々な受刑者がいる。昨日の夜は、夜読「やどく」(消灯後に隠れて本を読むこと)で夜中に巡回中の刑務官に怒られているのが外の廊下から聞こえてきた。当然、始末書を切られる。目も悪くなるし、怒られるし、何にもいいことないのにな・・・。なんでそういうことするのかわからない。
これは食らった本人から聞いた話だが、風呂の時間に、ある受刑者に精液を頭にぶっかけられて、怒り狂いそのまま素っ裸でその受刑者をぶん殴り喧嘩して調査、懲罰になった人もいた。
運動時間、誰とも話さずただただ筋トレを黙々とやっている受刑者。
余暇時間はずっと自分の部屋に引きこもり、昼食後の休憩時間も誰とも話さず目を閉じてじっとしている、人と全く関わらない受刑者。
いつも冗談ばかり言って周りを笑わせる受刑者。
刑務官にタメ口使う生意気な受刑者。
十人十色という言葉が最高に似合う舞台だ。
人間観察をするのには面白いが、そんなことをしていても時間の無駄だ、正直言って、刑務所の生活は決まったことだけさえやれば生活に不自由しない。何も困らない。娯楽などを捨てればお金もいらない。着るものから何から全部貸与してもらえる。
ここで刑務所川柳
務所暮らし 戒めないと 堕落する
本当にこの通りになる。自律心、向上心を持って目標に向かい動かなければどんどんダメになっていく。一日の課題をどれだけ真剣に取り組めるか、サボらないか、それ以上のことができるか。これが大切だ。
一人の時間になると、ふと子供のことを思い出す。
大丈夫かな・・・寂しがってないかな・・・。元気にしているかな・・・。
急に会いたくなったり・・・
子供の教育についても考えたりする。
ふと考えていると、子供って教えるのが好きなんだってことに気がついた。
保釈中、子供と一緒にお風呂に入っていた時、アンパンマンとバイキンマンの人形で遊んだ。私がバイキンマンの真似をしながら、
「カーキクーケーコー!!俺様バイキンマンだぞ!!」
って言ってたらすかさず子供が、
「違うよ!ハーヒフーヘーホー!!だよ!!」
と屈託のない笑顔で教えてくれた。
何度もふざけて間違えていると、
「パパすぐ間違えるんだから!!あはは!」
と笑い喜んでくれていたのを思い出した。
子供は教えるのが好きだから、こうしたらいいんじゃないのか。
子供が片付けをしなかった時、
大体のママは
「もう!早く片付けなさい!!散らかして!なんでやりっぱなしなの!」
と怒る。私の妻もそうだった。
じゃなくて・・・
「おもちゃってどこに片付けるの??教えて欲しいな!」
っていうと
自慢げに
「ママ教えてあげる!ここなんだよ!」
って素直に聞きそうな気がする。
やってみたいけど・・・できるの少なくともあと4年ちょい後・・・。
切ない。
子供は褒めていいところを伸ばしてあげるのがいいんじゃないか。認めてあげるのがいいんじゃないか。
子供が
「寒いよ」
って言ったら
「そうだね!寒いよね!今度お出かけする時は上着を着てこようね!」
とか・・・
「昨日より早くできたね!すごいね!」
とか・・・。
そういう積み重ねが子供の優しい心や人への接し方に繋がって行くのではないかと考えていた。
会いたいな・・・。
「ぱぁぱぁ!みずぶろはいろ!ひゃーつめたいねぇ!」
「パァパァ!パズドラいっしょにやろう!!」
「パパ!えほんよんで!!」
「パパ」
脳裏でリフレインする子供の声。
私の声も子供の心の中で聞こえているのだろうか・・・。
会いたい。
全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。
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