ニッポン 2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法 落合陽一 猪瀬直樹 書評
2018年10月31日発売の新刊です。
早速読みました。期待通りの面白さでした。
拙いながらも毎度のごとくレビュー書いていきたいと思います。
まえがき
この本の目的は、
これから東京オリンピックが終わり、元号も変わり、日本が新たなフェーズに達していく。
それ故に今、日本の近代って何だったのか。何が起こったのか。を学び直す必要性がある。
その上でこの国を規定しているものは何なのか。これから日本をどう構想していけばいいのかをしっかりと考える。
ということです。
猪瀬さんは、
元都知事として有名だと思うが、作家としても超一流である。
ミカド三部作を筆頭にノンフィクションの小説家で、近代について書かせたら猪瀬さんの右に出る人はいないのではないかと僕は思う。
ミカド三部作
ミカドの肖像 https://amzn.to/2P0dQox
土地の神話 https://amzn.to/2CVtsCj
欲望のメディア https://amzn.to/2yJAasr
興味があったら、一読の価値はあると思う。
僕は、「欲望のメディア」しか読んでいないが、「欲望のメディア」を読むと今のメディアがどのようにして出来上がっていったのかがすごくよくわかる。
かつ読み物としても面白いので、オススメ。
今はミカドの肖像を読んでいる最中です。
そのほかには「地下鉄は誰のものか」という本も面白かったです。
話は逸れましたが、
近代の政治、土地、メディアといった
幅広い知見を持っている猪瀬さんは、近代の問題点、日本の問題点を誰よりも理解していて、それを自分の手で改善していこうとした。
「東京からならば日本を変えられる。」と考え、都政に入ったという経緯で政治家の道を選んだのである。
猪瀬さんの近代日本に対する圧倒的知見と落合さんのテクノロジーや教育に対する知見との掛け合わせによって、
二人の共著によってしか書けない本に仕上がってる!
というのが僕の感想です。
個人的には、この見開き1ページ目のこのデザインもすごく好きでした。
それでは本章に入っていきましょう。
第1章
テクノロジーによって社会課題を解決する
日本の何が問題なの?
これは、平成最後の夏期講習という落合さんと小泉進次郎さんの二人の企画から生まれたもので、その中の23:20ぐらいからの安宅さんのプレゼンを見ると日本の問題がすごく良くわかると思います。
個人的にすごく面白かったので、是非観れる方は全部観て欲しいですね。
僕の解釈で噛み砕いて言うと、
人口が増加することを前提にして作られたルールが多い。
から今後人口が減少していく日本は、このままだとかなりやばいよね。
ということです。
第1章で僕が印象に残った言葉を二つ挙げたいと思います。
「地方再興をするための最大の条件は、テクノロジーフォビアにならないこと」落合さん
フォビアとは嫌うとことを意味します。
「行政はいたずらに規制をかけるのではなく、責任を持って、いらない規制を撤廃して民間企業の参入を促せばいい。問題が起きそうなものには、先手を打って、対策を考えて、ルールを整えればいい。」猪瀬さん
これが抽象的な観点からの指摘で、
具体的な指摘もいくつかありました。
その中で
ブロックチェーンでの資産管理というものがありました。僕もこれにはすごく賛成です。ブロックチェーンを使う目的としては、
余っているものを余すことなく利用する。
ということです。
そのためには、ブロックチェーンを使うのが一番早いよねーということです。
ブロックチェーンについて知りたい方は、
僕が読んだ本の中では
ビットコインはどのようにして動いているのか? https://amzn.to/2EWtwVe
という本がわかりやすかったです。
ビットコインの本質はブロックチェーンなので、この本すごくオススメです。
他にも多くの地域がこれからどんどん人口が減少していく中で、
千代田区、中央区、港区は2040年まで人口が増えるということには十分注意しなければならないという指摘もありました。
タワーマンションを一気に建てていることで、小学校などが足りなくなる可能性があることに注意しなければならないと落合さんは警鐘を鳴らしています。
地域によってとるべき戦略が違うということはしっかりと理解しないといけないと感じさせられました。
とはいえ、日本全体としてはこれからどんどん人口が減少していきます。
日本がこれから人口が減っていき、少子化が進んでいくことをむしろ日本のチャンスと落合さんが捉えているのですが、その理由は3つあると言っています。
1、テクノロジー導入にネガティブな圧力がかかりにくいこと
2、輸出戦略
3、教育投資
です。
1については、
要するに「AIによって仕事が奪われる〜」というネガティブな感情ではなく、人口が減っていて、労働力が足りないんだから、テクノロジー導入するしかないじゃんという論理でネガティブな感情なくテクノロジーを導入していけるということです。
2については、世界でもトップレベルに早く少子高齢化が進む日本で、その対策の知見を蓄積していくことで、今後世界で少子高齢化が起こったときに、貯めていたノウハウを輸出できるということです。
これは明治以降、西洋の文化を習ってきた日本にとっては、全く逆の動きになっているので、落合さんは「逆タイムマシンモデル」と本書の中で言っています。
3については、
単純に子供の数が少なくなったら、子供一人あたりにかけられる教育投資を増やすことができるよねー。ということです。
こう考えていくと、世界で一番に少子高齢化がくるというのも悪くない気がしてきます。
これは
日本再興戦略 https://amzn.to/2P0jCq9
でも言っていたと思います。
僕も書評書いているので、よかったらご一読を。
第2章
2021年の日本風景論
まず高度経済成長について。
日本が近代で高度経済成長を実現できた大きな3つの要素として
1、均一な教育
2、年功序列の給与と住宅ローン
3、マスメディア
であったと落合さんは、言っています。
これも日本再興戦略 https://amzn.to/2P0jCq9 で言っていましたね。
この話すごく納得感があって、個人的にすごく好きです。
僕なりに噛み砕いて説明すると(ちょっと誤解してる可能性あり)
1、3によって、
国民全体を標準化された人材を育て共通の価値観というものを作った。
そしてこの人材を生かし
車などの大量生産品の製造ラインに均質化された人々をのせ
安定したものを大量に作ることを実現した。
そして
2によって、
将来給料が増えていくことを確約し、マスメディアによりマイホームを持つことが善だという価値観を植え付け、多くの人が住宅ローンを組んでマイホームを買うことにより、稼いだお金の多くの部分を再度市場に回すことで
経済成長を実現したということです。
だから
近代の風景は、
「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」に集約されているのではないかと落合さんは言っています。
あれが、近代の風景の象徴と言えると。
猪瀬さんは
「風景を問うことは日本とは何かを問うことにつながります」
と言っていて、
それ故に
第2章は日本の風景論となっているんだと思います。
まず
日本という概念がいつ生まれたのか。
それは黒船が来航した時だったと猪瀬さんは言っています。
それまでの藩という単位では到底太刀打ちできない相手が突然目の前に現れた時に、
国全体で力を合わせる必要性を感じ、日本という概念や日本語という概念が生まれたと。
すごく興味深いですね。
その際に
ナショナリズムを国民につけるためにはどうしたらいいのか?
という問いが当然きますよね。
その答えが、
「風景」ということなのです。
富士山や松、太陽、松
それに加え、天皇も一種の風景として、
日本人のゲシュタルトとして存在していたのです。
これらにより、人々が同じ民族であることを認識していった。つまり、ナショナリズムが芽生えていったわけです。
国家もまさにその一種ですよね。
もっとミクロな視点で見ると、
校歌とかも一体感を感じるためのツールとなっているかと思います。
猪瀬さんの説明で
「風景」
が国にとっていかに大事なものかが本当によくわかります。
その上で、
東京オリンピックでは
「近代を超克」した風景を提示するべきだと落合さんは提案しています。
具体的な提案としては
伝統的なものをテクノロジーと接続させる
というものです。
これは実際に見た方がわかりやすいと思うので、リンクを貼っておきます。
僕はこれを見て、すごく美しいと思ったのですが、皆さんはどうでしょうか。
これはキリスト教やイスラム教では絶対できないだろうなと思います。
(無宗教の人が多い日本ならではと言ってもいいかもしれません。)
日本人のフラットさが生かされているいい例です。
そして
東京オリンピック以降
近代的な価値観をアップデートする時に
標準的教育とマスメディアの呪縛からいかに離れられるかが
ポイントになると落合さんは、言っています。
僕は、個人的にはテレビのない生活を5年続けているのでもう既にマスメディアの呪縛からは解かれているかもしれません。
きっと多くの人が、昔より地上波のテレビを見なくなったことでしょう。
その一方で、標準的教育からの脱却がすごく難しいと個人的には感じています。
これを実現するために、政治によって教育制度を変えることが一番効果があると思うのですが、しばらくは変わらなさそうだなと僕は思っています。。
第3章
統治構造を変えるポリテックの力
戦前 天皇主権
戦後 国民主権
というのが教科書に書いてあるが、実はこれは間違っていると猪瀬さんは言っています。
日本は近代以降ずっと官僚主権であると猪瀬さんは言う。
近代日本は12省庁がそれぞれ縦割りである
ということが問題だと猪瀬さんは強く主張している。
そこで
今後重要になってくるのが「ポリテック」という思想である。
ポリテックとは
「政治の課題をテクノロジーにより解決し、テクノロジーの課題を政治的に解決する、そして政治とテクノロジーがそれぞれ変化していくこと。」
と本書に書かれています。
政治の課題をテクノロジーにより解決するという視点が今後政治家に求められる。
ポリテックという言葉が理解されなくても、言葉として認知されていくことが重要である。
実体が伴ってくることによって、言葉が本当の意味で定着してくるだろう。
と落合さんは言う。
これからの教育において、大事なのは
テクノロジーと親和するという感性を育むこと。
実に明快だなと思うと同時にそういうことを教育できる教育者はかなり少ないんだろうなと思います。
ポリテック思考について↓(本書引用)
第4章
構想力は歴史意識から生まれる
次の時代を考える上で重要なことは主に3つあると落合さんは言っています。
1、歴史を学ぶ。
2、論理的な日本語力を身につける。
3、時代に適合した教養を身につける。
1については、
未来の日本を考えるには、それ以前の日本の歴史を学び、本質をつかんでいくしかないということです。
過去からの流れを知り、現在はどうなっているのかを理解することで、未来はどうなっていくのかを予想できるのです。
2については、
自動翻訳機が、どんどん正確になっていくこの世の中では、論理的で正確な母国語を使えることが何より重要になってくるということです。
僕の好きな幻冬舎の社長の見城徹さんも常々
「正確な言葉からしか正確な思考は生まれない」ということを言っています。
僕自身これはかなり意識しています。
ちなみにこれも日本再興戦略 https://amzn.to/2P0jCq9
で言っていたと思います。
気になった方は今からでも読んでみるといいと思います。
日本再興戦略も最高におもしろいです。
3については、
リベラルアーツに加え、メカニカルアーツ、つまりプログラミングも大事になってきているということを言っています。
僕自身、つい先日Pythonの勉強を始めたところです。
頑張っていきたいと思います。
それに対し、
猪瀬さんは全面的に同意していて、
さらに議論を深めていきます。
論理的な日本語力を身につけるということを考えるに当たって
そもそも日本語とは何か。
言葉を鍛えるとは何かということを考えています。
「世界史の流れに巻き込まれた明治の人々は、世界史の潮流の中で日本とは何かという自覚する。近代日本語は、諸国の方言を統一し、西洋の翻訳語を練り上げ、幾度となく繰り返されてきた「国難」の中で完成してきたものです。」
と日本語とは何かという問いに対して完璧な回答をしています。
つまり
思想や構想力を持った言葉が練られてきた。ビジョンがある言葉は国難から生まれてきたという視点が重要である
と猪瀬さんは説いています。
最後に
落合さんから
モチベーションを価値にする重要な能力を4つあげています。
それは
言語化する能力、専門性、論理力、リスクをとる力
です。
僕自身はこれらを意識していき、自分の価値を高めていきたいと思います。
具体的には、
僕は、ゲノム解析の分野で専門性を高めていきたいなと思っています。
修士課程卒業後は、
バイオベンチャーにいけたら、いいなと今は考えています。
そしてこうやってブログを書いていくことで
言語化する能力を身につけ、
日々の研究で、論理力を身につけていきたいと考えています。
リスクをとる力は、現在の生活ではあまり身につかないかなと思います。
何か考えないといけないですね。
長くなりましたが、
この本は、
過去について学んで、
現状をしっかり認識して
これからの未来をみんなでよくしていこうぜ。
というメッセージを伝えたいのだと思います。
その方法について、余すことなく書かれていて、すぐにでも出来るようなこともあります。
自分の出来ることを一人一人がしっかりやっていき、これからの日本を良くしていこう。
僕も微力ながらその力になれるように日々頑張って生きていきます。
感想待っています。
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