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展覧会スタッフコラム③:芸術の存在意義
芸術ってなんで存在するんだろうと考えることがあります。
ぶっちゃけなくても生きていけるのに古代から連綿と受け継がれていますし、人が生きる余裕がなかった時代にも確かに存在します。
人は芸術に何を求めているんだろう。
私はこのワークショップに参加して、そして展覧会の開催に携わらせて頂いて、その答えの一部が何となく分かったような気がしました。
それは、せわしない日常で取りこぼされている何かを拾い上げること。
ワークショップでお会いした瀬尾さんは、私たちが見過ごしていることを見つけ、優しく向き合っている方でした。
コロナ禍によって見えにくくなっていた他者の生活や思いが分かったり、誰かの話を自分のことのように伝えたり、普段当たり前に思っていることに疑問を投げかけたり。
10年について対話する中で、新しい発見や想起がたくさんありました。
それを芸術作品に落とし込んだものが今回の展覧会だと考えています。
私は対話から生まれたものがとても尊いと思い、それをかたちにできる芸術の力を感じました。
人の話は意識しないとすぐに忘れ去られてしまう。対話だけでなく、私たちは現代を行き交う膨大な情報を全て拾うことができません。
その中には忘れてはならないものも紛れ込んでいる。
じゃあどう意識して記憶し、未来に伝えるか。芸術が果たす役割のひとつが、これなのではと考えるようになりました。
芸術は私たちに、普段の生活での落とし物を知らせているんだと思います。
テキスト:R.S.(展覧会スタッフ)