カナダを跨ごう 〜ローマも添えて〜 【6日目:カナディアン号(2/5)】
まずは昨晩の話をしておこう。
食堂車で初めてのディナーをとることになり、一人旅ゆえ必然的に他の客と相席になった私は、幸いにして同じコンパートメントのおば様の隣を割り当てられた。多少なりとも緊張は和らぐも、初めての食堂車に初対面の人達との食事、ましてや言語は超苦手な英語となれば、あまり平常心でも居られない。舞い上がった私は、注文を取りに来たウェイターの話す言葉が右から左へと流れてしまい、全く聞き取ることが出来なかった!!
こんな時なんて聞き返せばいいんだっけ?あれ、メニュー何があったっけ、さっきメインで何選んだっけ…と完全に脳内パニックになってしまった自分。結局、見るに見かねた隣のおば様が丁寧に噛み砕いて説明してくれたのだった。ウェイターも私が英語ダメダメであることを察してか、ゆっくりめで話しかけてくれた。ありがとう、おば様、ウェイター…
日本人の恥さらしになってしまい申し訳ない限りだが、これ以降は今のところきちんと自力で注文出来てるから許して欲しい。
閑話休題。
さて、東ゆきのカナディアン号に乗ると、最初の朝はカナディアンロッキーのど真ん中で迎えることになる。ブラインドを開けてみると、外には一面の雪景色が広がっていた!
まだ周りの人達は寝ているようなので、この隙にシャワーを浴びてしまおう。サンライズのシャワー室 (使ったことないけど) と違い、カード争奪戦に参加する必要もなければ、時間制限に追われることもない。常識的な範囲内であれば、24時間いつでも自由にお湯を浴びることが出来る。すごいやカナディアン号。
山間では川沿いをなぞるように線路が引かれており、銀色の車体は身をよじらせながらぐんぐんと山中に進んでいく。
昨日から思っていたことだが、20両以上の客車を引いているのにも関わらずそれなりによい加減速性能を発揮し、しかも時には関西新快速並みの巡航速度を出せるのは、ひとえに大陸特有の大馬力重連機関車によるものなのだろう。普段数十両にも及ぶ長大貨物を引いている彼らにとって、20両ちょっとの客車と少しばかりの人間など大したことは無いはずだ。展望車の窓から前に目を凝らすと、客車の先頭で一際背の高い2両の機関車が時折黒煙を吐きながらせっせと我々を引いているのが見える。
列車は山を超え、カナディアンロッキーを望む街、ジャスパーに滑り込む。最初の長時間停車駅なので、街に出てみよう。いつの間にか州も変わってタイムゾーンも山時間になっている。時計の調節も忘れずに。
雪もちらつき、気温は-5℃と普通に寒い。列車はここで消耗品の補給をするようで、結局ほぼ全ての乗客は一時下車となったようだ。
街全体が落ち着いた雰囲気で、峠越えの機関車が息を整えるかのごとくアイドリングをしている音がこだましている。なんていい街なんだ…
ふらっと入ったお土産屋で一つだけJasperっぽいものを購入。さて、これは誰にあげようか。
この駅もまた、1925年に出来た年代物らしい。壁には、カナダ鉄道網の歴史的な駅舎の絵や鉄道建設時の写真が飾られていた。
1時間半の停車の後、列車は山を下ってエドモントンへと向かう。空はいつの間にか雲が晴れ、今旅初めての晴天にようやく恵まれた!
列車は時折貨物列車を抜かしたり、あるいは抜かされたり、もしくは対向列車の行き違いを待ったりしなが、キビキビと加減速を繰り返す。展望車の2階に上がれば、進行方向に光る信号機が列車の通過と共に赤く変わっていくのが良く見えて意外とおもしろい。そういえばこの鉄道はどんな信号保安制御をしているんだろう、信号直下地上子もないし安全側線もなし、曲線や分岐器前の速度制御もして無さそうだし、なんなら普通に本線上で後退したりするけどどうなってんだ…?
そんな野暮なことを考えていると、この日最後の長時間停車であるエドモントン駅に到着。各区間1時間ちょい遅れては取り戻すという感じで、意外とダイヤに余裕があるみたい。
列車は定刻通りにエドモントンを出発、アルバータ州の平野部を文字通り夜闇を切り裂くかのごとく時速130キロ超えで疾走する。流石にこれだけ早いと振動でちょっと寝づらいが、これはこれでアリ。
あしたはこちら。