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カナダを跨ごう 〜ローマも添えて〜 【7日目:カナディアン号(3/5)】

3日目の朝は、サスカチュワン州はサスカトゥーン駅から始まる。3日目最初の長時間停車駅だ。

朝靄の中を走る

日が昇るにつれ、辺り一面が朝靄に覆われていく。朝日に照らされたオレンジ色の朝靄の中を、これまた朝日が反射してオレンジに光る列車が気持ち控えめの速度で駆け抜ける光景はとても幻想的であった。千と千尋の神隠しで似たようなシーンがあった気がする。この列車には私以外にも何人かカメラに凝ったおじ様が乗り合わせており、展望車でお互い場所を譲りながら写真撮影に興じた。

3日目のこの日は、お隣マニトバ州の東の街ウィニペグまでひたすら平野部を走ることになる。天気がいいこともあって常に視界が開け気分が良い。この辺りは穀倉地帯のようで、至る所にサイロや倉庫があり、さらにそれらに向かって線路から専用側線が分岐していくのが見える。専用側線が廃れて久しい日本の鉄路ばかりを普段見ている自分にとっては、車扱貨物が現役のこの国の鉄路は車窓を見ているだけでとても面白い。

だだっ広い平野

何とも目に優しい光景だなぁと思いながら食堂車でランチを食べていると、突如陽気な車掌のアナウンスが流れてきた。

「カナディアン号の旅はどうだい?ちょっとしたトラブルだが、この先で線路がちぎれてるのをちょっと修理するんで、1-2時間止まることになるよ。まあ速度を上げて遅れを取り戻すから安心してくれ!メシこぼさないようにな!じゃあランチを楽しんでな!」

陽気な車掌(マーティン)

なるほど大陸ではこんなトラブルもあるのか。個人的には今後の予定もあって万が一のことを考えるとあまり笑えなかったのだが、乗客たちはみなアハハ~といった感じでのほほんとしている。列車の最後尾からは、信号を一つ挟んで後続の貨物列車が同じく運転再開を待っているのが見えた。結構過密運転なんすね…

迫る後続貨物

この日のランチで同席したご夫婦 (の特に旦那さん) とはカメラ・鉄道趣味が被り、話が弾む。「俺、鉄道信号集めるの好きでさ~」という言葉と共に差し出された写真を見ると、彼らの家の庭には煌々と光る鉄道信号がいくつも生えていた。聞けば、放出品を自分でレストアし、制御回路も自作して庭に立て直したらしい。一方の奥様は、呆れて物も言えないといったご様子。オタクの世界は広いが、金と時間と場所があるオタクが一番強いのは言うまでもないのだろう。しかもこの後、カナダ鉄路での信号システムについて解説までしてもらった。海外の鉄オタに悪い人は居ないんだなぁ。

1時間ほどして無事運転が再開した。修復部位であろう線路脇には「CN」とプリントされたゴツイSUVと安全ベストを着たゴツイ保線員が控えており、手を振って見送ってくれた。こんな何もない平野にもすぐに人間と機材を急行させて線路を直す体制が整っているあたり、大陸横断鉄路の維持にかける気合の程を思い知らされる。

車掌の宣言通り列車は順調に遅れを回復し、メルビル駅で時間調整をした後、本日の終点ウィニペグ駅に滑り込む。久しぶりのまともな屋根とホームがある駅だ…
ここは支社境界みたいなもので、バンクーバーからの乗務員とはお別れし、トロントまでの新しい乗務員が乗り込むことになる。これまた物資補給で長時間停車だったが、どの乗務員に聞いても違う出発時間を答える上に中央時間なのか東部時間なのかもあやふやだったので、おとなしくホームを散歩するに留めた。どうせ大雨で何もできないし。

前の方は屋根無し

ここから先、列車はオンタリオ州に入り人里離れた森の中を走る。電波も途切れ途切れになり、景色もなくなってきたところで大人しく就寝した。

次の日はこちら。

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