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カナダを跨ごう 〜ローマも添えて〜 【5日目:カナディアン号(1/5)】

何故この旅を計画したのか、その理由の全てがここからの5日間に詰まっている。

「学生の間に大陸横断をしたい」という安直な欲求は、必然的に「シベリアか、アメリカか、カナダか」という3つの選択肢にまとまり、ご時世的にロシアは行けないので、「AmtrackでCalifornia Zephyr」か「VIA RailでThe Canadian」かの2択に落ち着く。結局今回はスケジュール上の都合で後者を選び、まずは寝台の予約を勢いで取ってから、後付けで前後する旅程を設えたのであった。(そして、出発3週間前に急遽ローマが追加されたのだが、その理由はまた後ほど。)

チェックアウト時間ギリギリまで宿で暇を潰し、急いで荷物を詰め込んで市内に向かう。前日まで見繕っておいたお土産達を買い込み、メトロに乗ってMain Street-Science World Stationで下車。メインストリートと言う割にはそんなにメイン感はない駅前広場だが、まあこの際どうでもいい。メトロの高架駅を降りた先にあるのは、堂々たる雰囲気を放つPacific Central Stationである。

この見た目で日に4本ぐらいしか発着しない

時は第一次世界大戦の真っ只中の1917年に建設されたこの駅は、今ではカナディアン号のバンクーバー側の発着点として、あるいは国境を越えてアメリカ西海岸のシアトルに向かう"Amtrack Cascade"のカナダ側の発着点としてのみ使われているようで、時刻表を見たところ出発到着合わせて1日ざっくり4本ぐらいしかない。ちょうど自分が駅に着いたときにアムトラックも到着したようで、ぞろぞろと観光客風の人達が駅から出てきていた。

駅前にいたおばちゃん (このおばちゃんもカナディアン号に乗るらしい) に写真を撮ってもらい、駅の中へ。外見の割には中は意外とコンパクトで、VIA鉄道とアムトラックのチェックインカウンターや、ハンバーガー屋、両替所、お土産屋といった手頃なお店がいくつかある他は、木製のベンチが並んでいた。

チェックインに並ぶ人達

出発2時間前程からチェックインが始まる。今回私が予約したのは「Sleeper plus Class」の中でも最安の「Berth」、国鉄寝台で言うところのA寝台に相当するクラスである。お値段は4泊5日3食付きでだいたい10万円(1000CAD前後)。宿泊代と食事代と移動費が全て入っていると考えれば大したことはない気がする。各車両にいつでも使えるシャワーがあるし、ラウンジカーではソフドリやお菓子、果物がいつでも無料で手に入るので、意外とリーズナブルなのではないだろうか。

ちなみにこの下には「Economy」というリクライニングシートの席もあるが、こちらは確かシャワー無しアメニティ無し食事無し(有料軽食)だったので、流石に険しい旅になると思われる。

チェックインの後、出発の15時までは寝台客専用のラウンジで待つことが出来る。あいにく屋内席は埋まってしまっていたが、これから5日間お世話になる列車を眺められると思えばテラス席も悪くないね。クソ寒いけど…

トロントまでよろしくね

1960年代に製造されたとかいうノスタルジックな銀ピカの客車が、出発前の最終準備をしているようだ。最後尾の弾丸型の「Park car」をはじめ、随所に連結されている2階建て展望車の「Skyline car」など、およそ今の日本では見ることが出来ない車両たちがホームに並ぶ。ちなみにガワは古めかしいが、内装は適宜更新されており、枕元にコンセントがないこと以外今のところ(車内3日目時点)文句は無い。

やがて搭乗の案内放送がかかり、みんな一斉に自分の号車に進んでいく。とにもかくにも長い(20両ぐらいある)上にブルトレみたいな明確なサボがある訳でもないので、各車両入口に立っているアテンダントさんに尋ねてようやく自分の号車にたどり着いた。

A寝台同様、Berthも昼間は寝台が格納されて座席となるので、相席となったおば様や隣の席の人達と簡単に挨拶。早速展望車でウェルカムシャンパンが貰えるとのことで足早に向かう。

これは2杯目

一人旅の宿命として、あらゆる場面で相席が発生することは言うまでもない。そして、海外旅行において大抵の場合相席相手はバチバチのネイティブスピーカーな上、会話内容も日常英会話であるから、知らない語彙やイディオムが大量に登場する。こりゃなかなか厳しい5日間になりそうだぞと覚悟しつつ、のっそりと動き始めた列車に身を任せる他なかった。

バンクーバー市内を時速2-30キロほどの低速で身をくねらせながら進むこと約1時間、ようやく郊外に抜けて線路もくねくねするのをやめたようで、途端に齢60歳の客車は時速120キロを超える快速っぷりを見せつける。結局この日は1時間遅れで終わるのだが、案内放送いわく、「途中かっ飛ばして回復運転するから安心してくれ」とのことだった。
いつの間にかベッドに化けていた自室に潜り込み、就寝。寝台で寝るのは大学1年のサンライズ以来だなぁ。

日本人標準体型には十分広い空間

明日はこちら。

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