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「跳び箱ができるとき」に立ち会って思うこと

 毎年、何年生をもっても、跳び箱運動を行う。この跳び箱運動がなかなかにやっかいだ。なぜなら、得意と不得意が分かれるからだ。

 私は、「どんな子でも、○分で全員跳び箱達成!」ができるスーパーマンではない。でも、ほとんどの子どもは、跳び箱を跳んでいく。私の跳び箱指導を少し紹介する。

私の跳び箱指導の要点3つ。

 跳び箱は、大きく分けると、「助走」「踏切」「空中」「着手」「着地」に分かれる。それぞれで、必要なスキルを細分化して、その子に必要なスキルを指導していく。

 私が大切だと思っている跳び箱のスキルは、以下の3つだ。

1.短い助走から勢いをつけて両足踏切ができる。
2.おしりを上げるように跳び、手を奥につく。
3.前のめりの姿勢を維持し、手で押す。(突き放す)

 1ができたら、次は、3を指導する。
 3〜4段程度の小さな跳び箱を用意して、助走をなくし、奥に手をつかせ、そこからぐっと前に押し出すようにして、またぎ越すのだ。
 これを、繰り返していくと、どんどん肩が前に出る。そのイメージをつかんだら、あとは、跳んで、勢いをつけた状態でもできるように励ましていく。

 しかし、これがなかなか難しい。なぜなら、「怖い」という感情をもってしまうからだ。これを、どう乗り越えさせるか。

「怖い」というハードルを乗り越えさせるために

 この「怖い」を超えさせるために、私はいろいろと声をかける。

 お尻をついたとしても、その付いた位置が、少しずつ前に行っていることを伝え、「あー!5センチ前にお尻がついた!これは、あと6センチくらい!手で押していこう!」と言う。
 うまくいったら、前進した妥当な数字を伝える。
 うまくいかなかったら、少なく見積もった数字を伝える。「お!残念!3ミリくらい戻っちゃったな。でも、失敗を繰り返して成長するんだよ!あと、7センチ7ミリ!」のように。

 でも、こうしたハードルを乗り越えさせるために大きな力は何か。

一緒に努力する仲間の成功が、最も大きな力に

 毎年、跳び箱が苦手な子は、固まる。そして、その子達で、「えー。できないよねぇ。」などと傷を舐め合うように過ごしてしまう。
 そうして、「自分はできない」とお互いに言い合うので、「できない」という気持ちが固定化してしまうのだ。

 しかし、毎年必ず、練習を繰り返していくと、その中で、1人できるようになる。そうすると、また1人できるようになる。それが続き、その小集団のみんなができるようになる。まるで、オセロの黒が全部白にひっくり返るように。

 これは、その前の「ともに努力した」という経験が不可欠だと、毎年思う。

 一緒に頑張って、うまくいかなくて、くじけそうになっても、とにかくやってみて、その中でできるようになった友達の姿を見ると、それによって心の火が灯されるのだ。

 そうやって、努力してできた子を周りは必ず認める。もちろん、その場に立ち会えたら、教師も大げさに喜ぶ。というより、演技でもなんでもなく、素直に大喜びしてしまう。

毎年「跳び箱ができるとき」に立ち会って思うことは…。

 このような場面に出会った日、必ずどこかで振り返る。
 そして、いつも思うことがある。

 教師の力はきっかけにすぎないこと。というか、きっかけ以上のものにしてはいけない。「先生のおかげでできた」は、子どもたちのためにはならないからだ。これが、教師の醍醐味だという人も多いだろうが。

 跳べるようになるまでの努力、誰かが跳べるようになった瞬間の喜び。それは、全て子どもの力なのだ。最後の最後は、子どもの力で乗り越えさせる。

 跳び箱指導は、教師の指導技術を誇示するものになってはいけない。
 ※最低限の指導技術はもつべきだ。

 教師の指導を少なくして、足りない分を努力した子どもの力で乗り越えたと実感させるのだ。

 

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