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Xmas 懐かしの映画鑑賞(その3)『マラソンマン』(スポーツ映画ではありません。)
この映画の見どころは、マラソンおたくの大学生が走るところ、では“ない“。
ダスティン・ホフマン演じるベイブは、ニューヨークはコロンビア大学で歴史学を勉強する大学生。
オリンピックマラソンの覇者、アベベ選手を崇拝するマラソンおたくで、トレーニングも欠かさない。
父親が赤狩りに引っかかり自殺したとか、余計なディティールが描かれるが、その情報要るか?
さて、場面はニューヨークの街中。銀行の保管庫からダイヤを引き出した男が交通事故で死ぬ。
この男は、南米に潜むナチの残党ゼルの兄だった。
ゼルは、疑心暗鬼となる。ただの事故か?それとも?
銀行の保管庫の鍵は二つ。
一つは兄が、もう一つはゼルが持っていた。
ダイヤは、南米でのナチ残党の生活を支える資金源であった。
ベイブの兄ドクは、表向き金回りの良い実業家ということになっているが、南米に潜むゼルに金を送るカラクリの一端を担っている。
実は政府の特殊機関に所属していることが明かされる。
諜報員か?
ドクはパリの街中でもホテルでも命を狙われる。
ナチの組織とwin winだった関係にヒビが入ったか?
ゼルは、安全な南米の隠れ家を出てニューヨークに飛ぶ。
兄が死んだ今、サッサとダイヤを回収せねば❗️
ダイヤはユダヤ人たちから奪ったものだ。
ユダヤ人収容所で残酷なことを散々してきたらしい。
その輝く白髪✨で、【白い天使】と呼ばれ恐れられたゼルは、「バレんように、ちょっとでも白いトコ減らそ。」と頭髪を剃り落とし、アメリカ合衆国に降り立つ。
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さて、このゼル、イギリスの名優、ローレンス・オリビエが演じている。
『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リーと結婚していた美男である。
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夫婦で同じ職業だと上手くいかない、よね。
演劇界、映画界で名声を博すオリヴィエだが、ここでは猜疑心が強く冷酷な元ナチの歯科医ゼルを嬉々として演じている。
対面の話し合いは決裂し、ドクはゼルに刺されて死ぬ。
ゼルはカフスにナイフを仕込んでいるのだ。
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この兄のせいで、ただの大学生だったベイブが巻き込まれることになる。
ドクに何か託されていないか、何か聞かされていないか?
ゼルは、ベイブを拉致し拷問して聞き出そうとする。
ゼルはベイブに執拗に聞く。
「Is it safe?(安全か)?」
ベイブは何のことやらわからない。
何が安全かって?
いや、映画を見ている観客だって分からない。
yesと答えようが、noと答えようが、ゼルは満足しない。
元歯科医のゼルは、痛みを与える方法を熟知している。
「健康な歯にこのように…」とか説明付きで、ベイブの歯にドリルでウィ〜ンと穴を開ける。
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この映画で、多くの人の記憶に残るのは、このとっても痛そうなシーンだろう。
ハムレットなんかを真面目に演っていた生粋の演劇人オリヴィエは、実は引き出しが多く、このハゲ頭でサディスティックなナチもお手のものなのだった。
始末されそうになったベイブだが、走りに走って逃げる。
趣味のマラソンがこんなところで役に立つとは…
だから『マラソンマン』…
ゼルは、銀行の保管庫に預けられたダイヤを引き出しに行く。
大量のダイヤを目の当たりにして、思わず「はああ〜」と声が出てしまう。
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ゼルは、ダイヤの価値をリサーチするためにニューヨークのダイヤモンド街に赴く。
ナチ残党としては危険な行動だ。
ダイヤモンド産業には多くのユダヤ人が従事している。
ダイヤモンド店で、一人の男に「あんたを知っているぞ。」と話しかけられる。
相手の手首にユダヤ人収容所の認証番号の刺青を見てとって、慌てて店を後にするゼル。
往来の多い路上でも彼が「白い天使」だと気がついた老婦人が居た。
「ゼルよ! 白い天使よ!」と道端で叫び立てる夫人。
せっかく頭を剃った甲斐もなく、簡単に正体がバレてしまったのだ。(頭髪を染めるべきだったね。)
冷静を装うも、汗をダラダラ流しながら早足で逃げる。
宝飾店から追って来たユダヤ人は、お得意の仕込みナイフで首を切り裂き排除。
しかし、待ち伏せしていたベイブに銃で脅され、公園の中の水道施設に連れ込まれるゼル。
ダイヤでベイブを懐柔しようとするが拒否される。
ベイブはボロアパートに住み、生活は至って質素。
贅沢好みのドクとは違う。(ドクはきちんとしたスーツを着、フランスワインを嗜み、パリの宿泊ホテルはプラザアテネ)
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銃を突きつけ、ダイヤの入ったアタッシュケースを引き寄せるベイブ。
ゼルは「欲しいだろ?」と聞くが、ベイブは「いや。」と答える。
そしてゼルに「ダイヤを呑め。」と命令する。「呑み込めただけ取っていい。」
戸惑うゼル。訳がわからないのだ。
ベイブはダイヤを掴むとゼルに投げつける。
「Essen(食え)!」とちゃんとドイツ語でも言ってあげる。親切。
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投げつけられ、下に落ちたダイヤは床の鉄網の間から水の中にポチャンポチャンと落ちてしまう。
慌てるゼル。
ベイブは容赦せず、次々とダイヤを掴み投げつける。
何とかキャッチしたダイヤを口に入れ飲み込むゼル。
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もっと呑め!と言われNo!というゼル。
「お前には撃てない。腰抜けだもんな。」
ナイフを出すゼル。チャキーン❗️
揉み合いになり、ベイブはダイヤをアタッシュケースごと水の中に放り投げる。
ああ〜っと叫びケースを追って螺旋階段を転がり落ちるゼル。
アラ?ナイフが自分のお腹に刺さっちゃった?
最後は一仕事終えたかのように爽やかな顔したベイブの姿。
完
拷問シーンと「ダイヤを呑め」シーンのインパクトでうやむやにされているが、サスペンスとしては、もう少し説明が欲しかった。
・ゼルの組織のこと。(人を攫ったりするドイツ名を持つ部下が複数いる以上、組織があると思われる。)
・ドクがその組織とどう関わっていたか?
【おまけ】
ベイブの走る姿はあんまり美しくない。
物足りなかったら、お兄ちゃんのドクがパリのオペラ座の階段を駆け上る姿を見よう。
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