ハーケンクロイツ(鉤十字)事件
長男がまだ小さい頃…
家の玄関の真ん前の敷石に、ろう石で書いたと思しき小さな印を発見した。
その小さな3cm四方の印は、鉤十字ではないか‼️
「こ、これは…!」
家人と相談して警察に電話した。
ドイツでは、公の場でナチのシンボル、鉤十字を書いたり、使用することは禁止されている。
違反すれば3年までの禁固刑か罰金がある。
それまで安穏と暮らしていたが、我々はここでは外人である。
それも、見た途端に外人と分かるアジア人。
こんな田舎でも、いや、田舎だからこそ外国人排斥傾向があるのかも。
なんとも言えない嫌な気持ちになったのだが、警察は10分もせずすっ飛んで来た。
パトカーには4人の警官が乗っていた。
一人が夫に事情聴取をする間、他の警官はその鉤十字の写真を撮ったり、大きさを測ったりしている。
私は息子の様子を見に家の中に入った。
息子はベッドに潜り込んで泣いている。
「どうしたの?大丈夫。怖くないよ。パトカー来てビックリした?」
と慰めると、
「アレ、僕が書いた…」
と言うではないか❗️
「は?どうして書いたの?」
「日本でいっぱい見た。」
私はハタと膝を打った。
彼は、日本のカーナビに表示されるお寺の印、卍(まんじ)を覚えていて書いたらしい。
そう、卍と鉤十字はそっくりだ。
ただ、向きが違う。卍(まんじ)の横に鏡を立てたら、映った印は鉤十字。
私は外にまろび出る。
「スミマセン。アレ書いたのうちの子!おまけにHakenkreuz(鉤十字)じゃない!」
皆んな「え。」と動きを止め、一瞬ボーッとした顔になった。
すごい勢いで来てくれて、地面に這いつくばってチッコイ落書きみたいな(実際落書きだった…)卍(まんじ)の写真撮ったりして、大きさまで測って調書作ってたんだもんね。😓
「息子さん、何歳?」
「6歳です。」
「ああ、じゃあ、これからイヤってほど学校で習うか…。ま、親御さんからも教えておいてよ。」
と言うと、4人は機材を片付け去って行ったのだった。
その後、息子はそれこそオエ〜が出るほど、学校でナチスとホロコーストについて学ぶことになるのだった。
外人である息子だってオエ〜となるんだから、当事者のドイツ人はさぞかし辛かろう、と臭いものには蓋をして無かったことにする国から来た私は思うのだった。