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失われた余暇を求めて 『限りある時間の使い方』

『限りある時間の使い方』オリバー・バークマンを読んだ。
私の刺さったフレーズご紹介。


WMライフハックの違和感の正体

著者は、英ガーディアン誌の記者であり、ライターで、生産性オタク(共感)
ガーディアンの記者なので、ある程度思想的なポジションを前提に読んだけれど、私が日々感じている時間についてのモヤモヤがさーっと言葉を得ました。
私もWM(ワーキングマザー)の端くれとして、これまで時短ワザや家電・調理器具、家事代行など使えるものは駆使してきて、WMライフハックも活用してみたりもしました。

でも、WMだって時間は作れる!自分時間捻出のために、やってるタスクを見える化しよう!付箋に、手帳に書き出そう!というメソッドは、それが有効な人や場面があることは理解したうえで、あくまで私には刺さらないどころか、何というかほんのりと反発みたいな気持ちもあった。正直。

いえ、私、生産性オタクで、仕事でも生産性向上の専門分野なので効率化!見える化!システム化!大好きなんです。でも、なーんとなくそれらの自分時間捻出手法にフィットしない。

その解が、この本の中にあったんです。

「問題は、正しい時間管理術を見つけてないとか、努力が足りないとか、もっと早起きすべきとか、自分がダメ人間だと思うと言うことではない。
1日に詰め込めるタスクの量を増やしたからといって、
全てをコントロールできている感覚なんか得られないし、重要なことを全部やるだけの時間も生まれない

それだ

WM三種の神器(ホットクック、食洗機、ルンバ、洗濯乾燥機。あれ、4つあるな)を駆使したら、確かに家事は格段に楽になった。
けど、時間ができた実感がない。
わずかに空いた時間には、長蛇のやることリストの先頭がやること入りしてくるだけだった。
時間ができたらやりたいこともやるべきこととごっちゃになって(そしてやりたいことはのんびりすることなので)、もはや私はタスク処理マシーン。

「多くのタスクをこなせばこなすほど期待値がどんどん上がっていくと言う問題もある。
仕事で成果を出しながら子供と過ごす時間を何とか捻出したところで今度は別の社会的プレッシャーがやってくる。
もっと運動しなくては。保護者会に顔出さなくては。そろそろ瞑想の習慣をつけなくては。」

「彼女は効率や便利さでは、忙しさを解決できないと気づき、 生き方をすっかり変える決意をした。 どんなに時間を節約しても、本当に意味のある生活を手に入れることができない(彼女にとってそれは緑豊かな環境に住み家族との絆を深めることだった) それに気づいたおかげで彼女は変わることができた」

!!!(共感の嵐で言葉にならない)
そう、本当にほしいものは、ありのままの自分でいられる時間で、さらなるタスク処理のための時間ではないんだなあ。

「効率ばかりを求める文化に慣れてしまうと、手間を省きさえすれば何もかもが実現できるような気がしてくる。 でもそれは嘘だ。
人はいつだって、 何かを選び、 他の多くのものを捨てて、 喪失感に耐えなくてはならない

「今」は「未来」の準備期間じゃない

休息を休息として楽しむ為に、 まずは事実を正しく受け入れよう。
あなたの日々は、 完全無欠の未来のための準備期間ではない。

努力していればよりよい未来があるはずという希望からの、今。
今は未来のための手段になってしまっている。
歳を重ね、いつの間にか身につけてきたものが増えてきてしまったけど、私はきっと「捨てたい」のだ。

40歳を目前にして中年の危機に襲われた体験を語っている。奇妙な虚無感に包まれた彼は、今までの人生があまりにも目標志向だったことに思い至る。活動そのものを楽しむのではなく、何かを達成するために走り続けてきたのだ。
哲学雑誌に論文を発表したのは、テニュア(大学の終身雇用資格)への道を早めるためだった。テニュアを求めたのは、学者としての地位を確立して経済的安定を得るためだった。学生を教えたのはそれらのゴールを達成するためであり、また、学生たちの学位取得とキャリアを手助けするためでもあった。

彼は僕たちと同じ問題を抱えていた。時間がすべての何かのための手段になってしまい、今この時の価値が失われていたのだ。中年期には、多くの人が自分の姿を意識し始める。私を意識すると、将来のためだけに生きることの不条理さを無視できなくなる。

「今を生きるための最善のアプローチは今に集中しようと努力することではない むしろ「自分は今ここにいる」と言う事実に気づくことだ 今を生きようと言う時、あなたは自分を今から切り離した上で、今をうまく生きられたかどうかを判断してようとしている。」

休むことを自分にゆるす

時間を創出したら、次なるタスクに駆り立てられることを本能は察知していたのかもしれません。

ゆっくりとした自分の時間が必要なら、勇気を持ってやるべきことも一旦置いといて休めばいいだけ。
後で片付けるのが面倒だからとついつい未来のために今の自分を酷使してしまう。
たくさんの「べき」に駆動されて、「自分」の声を蔑ろにしていると、本当に自分がやりたいことがわからなくなる。そうして貴重なスキマ時間も「べきタスク」に割いてしまう。

自分を労ることを許し、休むを楽しむ。
この感覚を楽しんでみたいな、と思います。

『限りある時間の使い方』オリバー・バークマンhttps://books.rakuten.co.jp/rb/17185858/