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キヤリア棚卸(4社目:B&R)

失意の中、なんとか拾っていただき転職した先はB&Rというオーストリアの制御機器メーカーです
なんというか本当に良くしていただき、自信を回復することができました
コロナの時期とも重なり、リモート勤務やウェビナー開催などこれまた今につながる働き方を学ぶことができました


B&Rとは

B&Rはオーストリアのザルツブルク郊外に本社と工場を持つ制御機器メーカーです
日本ではあまり名前が出ていないのですが様々なところで使われています
特に、食品や医薬品の製造ラインに使われている海外製の生産設備でのシェアは驚くほどです
シーメンスももちろん同じような製品を販売しているのですが、そのような生産設備に使われていると聞いたことはあまりありません
私の思う相違点は下記です

  1. ターゲットとする市場が明確

  2. ソリューションエンジニアを自社で抱え、顧客ともに生産設備を作り上げる

  3. 価格レンジ

  4. 新商品リリースのポリシー

すべてについて語る場所ではないので、自分の学びとしてあげていってみます
とにもかくにも、B&Rは大きな会社ではないため、少ないリソースをどこに割り振るかが大事になります

コア技術

B&Rのコア技術はモーション制御です
いわゆるモーターがくるくる回って、お菓子を包装したり、ジュースをボトルに充填したりする制御です
こういったところにはいわゆる「メカトロ技術」といって、お客様の機械についているハードウエアと、それを駆動するサーボ技術、統合するソフトウエアの3つがしっかり連動する必要があります
お菓子の箱の印刷がずれていたり、ジュースの内容量がボトルごとにマチマチだったりは嫌ですよね

ジャンルは違うのですが、部屋の温度を制御するエアコンのようなものです
温度を設定したらその温度になるように動きますよねエアコン
そのやり方を「位置決め」に応用したのがモーション制御 モノを正確に動かしたり止めたり、する技術がとても優れているのです

顧客とともに働き、顧客の成功を願う

設備が作っている商品の特性や作り方、生産設備の設計思想などをしっかり盛り込んで、B&Rの制御システムに組み込む必要があります
シーメンスなど大手は、この仕事は代理店やインテグレータが実施するとして、「標準製品」を世の中に販売します(日本の大手メーカーもそうですね)
B&Rは中小規模の会社なので、代理店任せにするほどボリュームもないしシェアもないので、自分たちで一緒にお客様と設備を作り上げる選択をしました
ランチェスター戦略とでもいいましょうか、勝てる市場を絞り込み、すべてのリソースをつぎ込んだからこそ、お客様がお客様を呼び、業容を拡大してきました
知る人ぞ知るメーカーなのです

自信を取り戻そう

できることから

もちろんB&Rは単品製品での販売も過去からあり、特に産業用パソコンについては一定の需要がありました
実は3社目の会社では、以前B&RからのOEM供給を受けた産業用パソコンを販売しており、モデル変更で別のメーカーに切り替わってからも、B&Rの品質や耐久性の高さを買って供給元のB&R製品を採用していただけているお客様がありました
シーメンスで産業用パソコンのマーケティング営業をしていた実績がある私は、まずはこの辺りから地道に始めました

新規製品で新規顧客を開拓する難易度

アンゾフマトリックスという分析手法があります
ざっくり市場を新規・既存、製品も新規・既存に分けて、どのように成長するかの基本戦略を可視化するツールです


一般的に、新製品を市場に投入する場合、最も大変な営業手法は「新製品で新しい顧客を開拓すること」と言われています
特に規模の小さいメーカーは、既存顧客には新規製品を、新規顧客には既存製品を売ることで拡大するのが定石です
図でいう「多角化」=新規製品x新規顧客、は最もコストと時間がかかるやり方と言われています

以前失敗した理由の1つがまさにこれで、経営側としては「新製品の導入」を既存ユーザに売り込むつもりだったのに、従来からの営業や代理店をうまく巻き込めずに、新規顧客しか回れなかったことが大きな障壁となりました

B&Rにおいても、基本的にはすべて新規製品を新規顧客に売ることなのですが、従来の営業マンや代理店がいなかったため、じっくりと取り組むことができました
会社の文化として、顧客とともに成長する、が浸透しており、慌てて数字を求めることなどもあまりなかったこともあります

アカウント中心営業へ

これで安心してターゲットとしたお客様へ浸透することが可能になります
主に3つの方法でお客様へアクションプランを立てます

  1. ソリューション事例やエンドユーザー事例の紹介

  2. トップレベルへのコンタクト

  3. 現場レベルのチームビルディング

私がターゲットにしていたセグメント(産業の種類)は、包装機械や飲料充填機械のメーカーです
賀詞交歓会や展示会などを通して、お客様の担当者レベルだけではなく顧客の経営陣に対して、ファンになっていただくことを心掛けました
実は3社目でも同じような取り組みをしていたんですよね。ある大阪の中規模の包装機メーカーの専務さんととっても仲良くなって、いろいろなお客様のトップ層をご紹介いただいたり、一緒に中国の展示会に視察に行ったり、大変お世話になりました

包装機械や飲料機械は、大手グローバルエンドユーザー(たとえばP&Gやコカ・コーラ)も要求も高いため、欧米が進んでいるという面があります
そのような事例を紹介していくことで、日本のお客様の経営課題まで踏み込んだり、顧客とビジネスを考えるというところまで可能になります

次の挑戦へ

こうなると、お客様としては、その先のエンドユーザー様に対してどういった良い生産設備を提案できるのか、というフェーズになります
一緒にエンドユーザー様への提案書を書けるようになれば、自然と受注へと近づいていきます。
お客様と案件リストと案件情報をやり取りしながら量産フェーズに移るようなことまで進み順調な一歩を歩み始めました

ウェビナーをやろう

コロナの時期でもあったため、お客様への訪問はかなり限られることになります
ここでみんなで考え出したのがウェビナーの開催です
かなりお金と時間をかけ、単なるパワーポイントでのプレゼンだけではなく、アンケートや質疑応答のセットアップをしたり、スタジオを使って本格的に対話形式のセッションを用意したり、極めつけは業界にインパクトのある超大手ユーザーのキーマンと社長の対談を実施できたことですね
このコンテンツは大人気で、普段はお会いできないようなハイクラスの方などにもリモートでご参加いただけたりと大成功となりました

学校(ビジネススクール)に行こう

そんな中、コロナ時の暇時間に見つけた中央大学のビジネススクール(CBS)に応募し合格しました
以前からあこがれもあったのですが、会社を休んで昼間に通う全日制しかイメージがありませんでしたが、コロナの影響もあり、平日は夜だけリモート講義、土日は必要な講義だけ通学、という形となっており、とても通いやすいと感じました
それに、少ないながらも50代、60代もいるということで勇気が出て通学を決めました
2022年4月から2年間、これも今までの自分からすれば大冒険です
実際に人生がかなり変わったCBS進学となります

挑戦は終わらない

私は自信を取り戻すことができましたが、唯一待遇(お給料)だけはちょっと不満があったんですよね
それに、数年前に大手欧州電機メーカーに買収されており、刻一刻と組織再編の波が近づいてきていました
そんなタイミングで、次の会社から驚くようなオファーが届き、かなり迷ったものの3年半の幸せな在籍期間を終えることとなりました


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