
石灰岩のスクリーン(映画エッセー12)
2024年の日本公開映画ベストテンについてメモ。日本映画、海外映画の区別は問わない方針で。
1.リトル・ワンダーズ(監督:ウェストン・ラズーリ、2023年製作)
2.フェラーリ(マイケル・マン、2023)
3.Cloud クラウド(黒沢清、2024)
4.エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(マルコ・ベロッキオ、2023)
5.夜明けのすべて(三宅唱、2024)
6.ゼンブ・オブ・トーキョー(熊切和嘉、2024)
7.ヒットマン(リチャード・リンクレイター、2023)
8.陪審員2番(クリント・イーストウッド、2024)
9.青春(ワン・ビン、2023)
10.ビートルジュース ビートルジュース(ティム・バートン、2024)
本当は『ビートルジュース2』がベスト1かもしれん、もう誰もバートンに追いつけないだろうと思いつつ『リトル・ワンダーズ』が好き。これを見た後、2ヶ月ほど映画館に行くのをやめたほど(もう他の見なくていいや)。子どもが家の中で暴れて、大人を騙して結果を追い求めるが、子どもと大人の境を超越した魔に触れて、傷だらけで還ってくるという物語フェチなのかもしれない。フィービー・フェッロのビジュアルにもやられたし、男子立ちの背が低いのもいい。魔女の存在の濁し方、前向きに捉えていいんじゃないだろうか。
マイケル・マン新作は圧巻の謎づくし。誰も感動できない仕様になっているのに、とんでもないものを見せられた、信じられないという気持ちで劇場を後にした。北野武の『Broken Rage』が良くも悪くも話題だが、手札を見せずにここまで観客を置き去りにして、なんとなくペネロペがかっこいいんじゃないかと誤解させる女性の映し方。『ブラックハット』の次に『ALI アリ』の続編が来た、的な怖さ。舌を巻いた。巨匠の新作でいえば遺作詐欺まがいの『陪審員2番』も壮絶だった。裁判が閉じた後、トニ・コレットに終わったんだ…とドヤ顔で供述する主人公の顔の逆説的な精悍さ。二度も部屋の照明を消した奥方。なんだこれは。
『Cloud』は黒沢作品で『Actually…(Music Video』以来の個人的大ヒット。ヒロイン不要に感じてしまった自分を反省しつつも『蛇の道』も相当好きだった。
『ミレニアム・マンボ 4Kレストア版』は除外。人生に影響を与えられすぎていて番付付加。『骨を掘る男』の、土壁に囲まれた画面の暗さと外に出た画面の光のギャップに頭がくらくらした体験が忘れがたく、劇場で見られたことを誇らしく感じる。
夏鈴ちゃん主演の邦画も大好きだったさ。
もう一つ。
数年前からFilmarksで見た映画の大雑把な感想を好き放題書いてるのだが、Filmarksに登録されている作品は、短編や配信のみ展開の作品等こぼれてしまっているものも存在している。それらを鑑賞した後は、Filmarksにて記録は叶わずとも、折角なのでnoteに記録を付けることにしている。点数はあくまで好き嫌い。
●ヒストリー・オブ・ホラー(2018) ☆1.7
イーライ・ロスの指揮による、ホラー映画の世界的な歴史をアーカイブ形式で、ホラーのジャンルによってまとめたドキュメンタリー番組。ドラマのようにシーズンごとに制作される。U-NEXTにて視聴。
日本映画の定型は日本の観客を怖がらせるがアメリカの観客には通用しないだのどこぞのプロデューサーに言われるが、『THE RING』の元ネタはほぼ掘られず、アメリカ内の一過性のブームとして捉えられている。これについてはイーライ・ロスのコメントなし。吸血鬼映画のクィア学的視点からの見直しってそんなに一般的だったのか?
TVドラマへの言及にも多くの時間を割く。
●ヒストリー・オブ・ホラー シーズン2(2019) ☆1.6
ボディ・ホラー回に登場する『ソサエティー』全く知らず。技法、技術面での学びが多かった本シリーズ、話題が主題論に横滑りしていった印象。最終話でイーライ・ロスチョイスの映画紹介になるのは面白い。ベルイマンの『処女の泉』がここまでに二度も引用されている。人間パズルオチのロスおすすめのスラッシャー、いつか見たい。『食人族』監督がロッセリーニから影響を受けていた?なんてコメントも登場。ロブ・ゾンビの風貌だけで、この人の作品は真面目に見なきゃいけない、と確信する。
●ヒストリー・オブ・ホラー シーズン3(2021) ☆1.8
インタビューに登場するジョー・ダンテのみ、映画史に対する教養の深さが他のコメンテーターと明らかに違っている。超能力の回で『スキャナーズ』より『デッド・ゾーン』に時間を割く構成、嫌いじゃなかった(前者は別回で度々話題に上がるためだろうが)。いつ見てもクリストファー・ウォーケンが未来の勝利を確信するインサートのイメージが素晴らしい。日本で馴染みの薄い、祝祭日のスラッシャー・ホラーに焦点が当たる回は非常に興味深かった、『悪魔のサンタクロース』『テラー・トレイン』『暗闇にベルが鳴る』『血のバレンタイン』『マザーズデー』『エイプリルフール』など知らないものばかり。当たり前のことかもしれないが、アメリカには学校にまつわる怖い話、という語りはないようだ。日本映画はここまで『リング』と『呪怨』以外無視。
●名探偵金田一耕助 横溝正史の真珠郎(演出:田中登、1983) ☆2.2
蛍を食べる真珠郎のイメージ、鮮烈。この時代の日本映画の血のりは本当に素晴らしい(最近の血のりだと『リング2』の、事故死した松嶋菜々子の血が息子の名前を発しながら滴って近寄ってくるあれ、大好き。余談すぎる)。
●笑顔の町(小泉雄也、2023) ☆1.3
迷惑系YouTuber表象、他のテンションも見てみたい。そういえば『ビートルジュース2』でついにバートンが配信映像まがいのものを作っていた。
●The View(中野滉人、2023) ☆1.3
●学校が嫌いだ(奥田悠介、2023) ☆1.4
今年は劇場であまり新作映画を見ない予定。ホラー映画祭りに便乗できていないのは寂しい。
ゼメキスの新作(怪しい予告編だが『マーウェン』予告編を初めて見た時の感動を思い出した)を見られたら、この上なく嬉しい。