手ぶら登園から考える日本の保育園事情
つい先日、大阪府茨木市に手ぶらで登園可能な保育園がオープンしました。「手ぶらで登園!?」と私は驚いていたのですが、調べてみると、日本全国にいくつかあるみたい。文字通り「手ぶら」なので、おむつやお昼寝布団などすべて園で用意をしてくれます。そして、お着替えも園で洗濯・補充してくれるという手厚さ。手書きで書かなければいけない連絡帳がないのは、保育士さんの負担軽減にも繋がるのではないでしょうか。最近、話題になっている使用済おむつの持ち帰り問題もそうですが、「これは何のためにするの?」と思ってしまう習慣が保育園には多いように感じています。
この手ぶら登園というスタイル、実はフランスでは「普通」らしいのです。というか、パリ市では公立保育園の運用は合理化されたルールが定められており、保育士は子どもを見守るという業務に集中できるようになっているらしいのです。また、パリ市では保育士の研修にも力を入れていて、古い保育習慣に固執しないように配慮されています。
日本には日本のスタイルがあるため、すべてをフランスに学ぶ必要はないと思いますが、「手書きの連絡帳には愛がある」とか、「子どもたちのために制作物は家に持ち帰ってでもする」などという古い習慣は、保育士さんの負担になるだけでなく、保育の本質である「見守る」余裕を欠くことに繋がると思います。
保育現場の課題
冒頭でお伝えした、大阪府茨木市の保育園の開設に携わっていらっしゃる上田久美子さんにお話をおうかがいしました。上田さんは元保育士という経験を活かし、園の保育士育成を行っていらっしゃる方です。
上田さんがおっしゃるには、「日本では、新人保育士は先輩保育士のやり方を見よう見まねで覚えるんです。だから、保育士によって子どものサポートにもバラつきが生まれます。これは、子どもの心の成長や安定に影響します。」ということ。
これまで企業勤めしか経験のない私にとって、ちゃんとした研修がないのは驚きだし、働く側にとっても不安のタネになります。特に、小さな子どもの安全を預かる保育士という仕事は、もっと質を維持するためのサポートや制度が必要です。先輩保育士から教わることも大切ですが、それだけだと、情報はアップデートされず、古い習慣は古いまま。それに加え、労働環境が改善されなければ、新しいことに取り組もうとする余力も生まれません。
最初、「手ぶら登園」のことを聞いたときは、ママの負担を保育士にスライドさせただけだと感じましたが、フランスの事例などを見ているとそういうことではなさそうです。保育現場の合理化は、子ども・親・保育士にとって共通する安心・安全な場所になると思います。
ちなみに、上田さんが掲げるミッションは、「子どもの安心・安全な場所をつくる」ということ。これまではママ向けの育児セミナーを行ってこられたそうですが、今後は保育士育成を中心に活動していきたいとのことでした。私も一児の母として、上田さんの活動を応援しています。
本日のぽろり
そういえば、うちの子がまだ1歳だった頃、私も保育園から毎日、使用済のおむつを持って帰っていました。子どもの排泄頻度や健康状態を確認するため?かと思っていましたが、家に帰っておむつの中身を確認したことなんて一度もありません。その他にも、「なんで?」と思う習慣はあるのですが、子どもを預かってもらっているだけでも有り難いのに、保育園に文句を言うことで、関係性が崩れたらどうしよう、とか余計な考えが脳裏に浮かびます。また、「決まっていることだから」と、保守的になっていたのも確かです。
でも、保育とは「子どもを保護し、育てること」なのであって、母親である私は我が子の保育を一時的に保育園という施設に託しているのです。だとすれば、その責任は親・保育士に同等にあり、保育現場の環境改善は母親である私にも関係のあることです。保育現場で働いたことがない私にはわからないことがまだまだたくさんあるのでしょうが、子どもの成長を願う大人として、一緒に考えていきたい課題だと感じました。