チケットと熱狂を求めて。2008年、真夏の北京。

夏に開催予定となっている東京五輪2020。それ以前に、同じアジアで行われた夏季五輪は2008年の北京。「Beigin 2008」が、自分にとって、初めて現地で観たオリンピックだった。

北京への航空券は6月頃に購入していたものの、競技の観戦チケットは持たずに、現地へと向かった。当初は、街中で感じるであろう大会の雰囲気を味わえるだけでも、と思いつつも、心のどこかで観戦への淡い期待も持ちつづけていた。

大会が開幕して間もなく、北京国際空港に降り立つ。巨大、という言葉でも足りない程の空港のバカでかさと、施設内のエレベーターから降りてくる係員の人数の多さに圧倒されながらも、バスターミナルへ向かい、宿泊先へ向かう。

バスと徒歩で目的地へ。北京の一角にある、日本人と中国人との夫婦が経営するユースホステルで3泊するスケジュールとなっていて、無事に宿に辿り着く。

宿内では、日本人宿泊客の姿も多く、あちこちで日本語の会話が聞かれる中、宿の壁には日本語の張り紙が。

「野球チケット 日本対アメリカ 〇〇〇円!」

野球競技のチケットが入手出来るとのこと。宿の女主人からも、「チケットは現地でも購入出来ますよ」と、教えてもらった。購入ルートはともかく、競技観戦の可能性は、日本出国前より格段に膨らんだ。

この北京五輪では、自分の中で大会前より最も関心が高かったのが野球、「星野ジャパン」の戦いぶりだった。初めてプロ選手参加が認められたシドニー、長嶋茂雄監督に率いられオールプロで臨んだアテネと、何れも金メダルに届かず、2012年ロンドンでは野球競技が除外されることも決まっており、北京での金メダル獲得は至上命題となっていた。

また、指揮官である星野監督の「金メダル以外いらない」といったコメントや、エースとして位置づけられていたダルビッシュ有、四番を任された新井貴浩等のプロ選手たちの顔触れも、多くの野球ファンの勝利への期待を高めていった。

ユースホステル内で見かけた野球チケットの張り紙は日程が合わず、さらに高額だった為、見送ることに。だが、「『チケット』と書いた紙を持ってスタジアムの周辺で立っているべし」と、観戦チケット入手の方法も、宿の女主人がレクチャーしてくれた。なるほど、よく映画なんかでみるあのポーズか。他にも、中国人の旦那さんからは「中国では野球人気は低いから、きっと手に入るでしょう」と励ましの言葉をかけられる。さらに、同じ宿泊客内の「ネットワーク」により、女子ソフトボールの試合チケットが手に入った。

初めて訪れた中国、北京市内の一晩1000円の安宿では目まぐるしく展開が進み、一気に五輪モードへと加速していく。野球日本代表の試合観戦が俄然、現実味を帯びた気がした。(佐藤文孝)

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