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オンリーワンのピアノライフ

一昨年の12月から大人のピアノ教室に通っています。

次男が大学生になってアパート暮らしを始めたので、彼が子供時代から使っていたピアノの弾き手がいなくなりました。たまに帰ってくれば弾きますが、圧倒的に空いてる時間が多いです。

勿体ないし、何より自分が弾きたい。

ピアノには消化不良の思い出があります。小2の時に少しだけ習ったのですが、何故か姉にもうやめろと言われてその通りにしてしまったのです。5歳年上の姉のいうことは当時は絶対でした。

赤バイエルが終わって黄バイエルに進んですぐだったので、私はハ長調とト音記号しか経験できませんでした。

そんな無念さがあったので、自分に子供ができたらピアノをやらせようと思ってました。親の夢を子供に託しちゃいけないのは最近では常識ですけど、当時の私は何も分かってませんでした。

幸い、次男は手先が器用で人前で弾くのも好きだったので、ピアノが好きになりました。でも、気分が乗らないときは全く練習しないので、私は随分イライラさせられて、ピアノを巡って派手な喧嘩を何度もしました。中学の終わりに反抗期がピークに達した時、ついに彼はピアノをやめました。

ところが、次男は大学生になってからまた再開したのです。最近はYoutubeなどでピアノの動画も多く、そういうのを見てるうちに弾きたくなった模様。コロナで自宅から出られないのも影響しました。

今回は自分でやり始めたので、朝から晩まで、もう休んだ方が良いのではと言っても弾くのを止めません。

やらされてなく好きでやってると、人はこんなに熱中するんだとびっくりしました。(まあ、一旦熱が冷めると何日も弾かないのですが。)

あんまり激しく長時間弾くのでマンションの上の階から苦情が何度もきました。鉄筋のマンションの1階角部屋で、外壁側に付けてピアノを設置してたので大丈夫かと思ってましたが、駄目でした。苦情の度に演奏時間を段々短くしたのですが、最後の苦情では、ピアノを弾くときはヘッドフォンをしろと言われてしまいました。

マンションの管理人さんに言わせると、苦情の主も少し難ありの人なのだそうで、その後も昼間の短時間なら引き続きヘッドフォンなしで音を出して弾かせてもらいました。

そんな次男も、コロナが落ち着いて、大学もサークルも始まり再びアパートに戻っていきました。

ピアノがまた空いてしまいました。
いよいよ寂しくなって、本当に自分で弾いてみようと思い立ちました。

でも、いざ弾いてみると、自分の演奏は余りにもみすぼらしくて嫌になりました。手先が器用な次男が難曲をバンバン弾くのを聞いていたので、本当に惨めな気持ちになりました。

でも、やっぱり弾きたい。

私の好きなテレビ番組に、駅ピアノ・空港ピアノ・街角ピアノってのがあります。

国内外の空港や駅、街角に置かれたストリートピアノに固定カメラを付けて演奏する人々を映し、その人に短いインタビューをするというものです。

国内の場合は、ピアノの先生だったり音大生だったり子供のころから習っていたりと、腕に覚えのある人が多いですが、時々、大人になってから独学で学んだ人なんかも出てきます。(海外だと、独学派が増えます。演奏もその人独自のスタイルだったりして面白いです。)

上手な人の演奏も勿論良いのですが、大人になってから(人によってはそれこそ50代60代になってから)ピアノを始めた人が一生懸命に弾く演奏の方が、何故か私は心を打たれてしまいます。

そういえば、次男のピアノ教室の発表会で、保育士になるために大人になってから習い始めた生徒さんが出ていたことがありました。

このピアノ教室は先生がとても熱心で面倒見が良く、コンクールで全国大会に行く子が出るなどしてピアノ巧者の子供が沢山いました。

そんな中、その大人の生徒さんは、年下の子供たちよりはるかに易しい曲でしたが、それは丁寧に演奏したのでした。聞いていて涙が出てきました。今思い返しても、発表会で涙が出てきたのはあの人の演奏だけだったかもしれません。


心打たれる大人ビギナーの演奏を思い出すうちに、私の惨めな気持ちはどこかに行ってしまいました。

私も弾きたい。
絶対に弾きたい。
死ぬまでにちょっとでも上手くなれればいいから弾きたい。

最初は独学を考えました。

今更こんなおばちゃんがピアノ教室通うなんてこっぱずかしいし、先生だって物覚えが悪くて伸びしろの少ない大人の相手なんてしたくないだろう、なんて、考えなくて良いことを考えたりしました。意地悪な先生に当たって馬鹿にされたり、大人だからって法外なレッスン料とられたりしたらやだな、みたいなことも考えました。

しかし、私は独学向きじゃありませんでした。なんか、こう一人だとナアナアになってしまうし、やる気が起きない日もあったりで上手く進めないのです。(ピアノを弾きたいという大きな欲求はあるのだけど、日々の生活に上手く落とし込めないみたいな状況です。)

人によってはセルフコントロールが上手で、一人で地道に努力を続けてマスターしてしまう人もいます。そういう人のことは心底尊敬します💛。

それに比べると私はセルフコントロールが下手です。でも、そんな自分を駄目だとは思いません。ただタイプが違うだけです。自分のタイプに合ったやり方を選べばよいだけのことです。

私は、あえて「大人のピアノ教室」と銘打っているところを探して通い始めました。

結果は大正解。

先生は若くてかわいい女性です。私から見ると娘みたいだったので、「学生さんですか?」と聞いてみたら、「とんでもないですっ!そんな若く見て下さってありがとうございます。」と照れながら言われました。

本当にかわいらしい先生ですが、知識も経験も十分で、本当に色々と教えてくれます。楽譜を見ただけでは分からない演奏の細かいポイントや、それを実現するための手の動かし方や力の入れ方、練習法など、一人では絶対に分かりようがなかったことを教えてくれるのです。レッスンの度に「へーーー」「ほーーー」と感心しっぱなしです。

帰宅すると先生に教えていただいたことを注意しながら練習します。最初は全然できません。

「これ絶対に無理!」といつも思います。

でも、とりあえず、あと何日か何も考えずやってみようとひたすら繰り返してみます。(千回やってだめならあきらめようと考えたりします。)そうすると、あら不思議、本当に少しづつですが、できるようになってくるのです。そして、あるときフッとコツが掴めたりします。このコツをつかむ感じが快感でたまりません。

私の練習の仕方はかなり特殊です。家ではいつもヘッドフォンつけてサイレントモードで弾いています。上階から騒音の苦情がくるのも怖いですが、それ以上に、余りにも下手なので自分の演奏を家族にも聞かせたくないのです。誰にも聞こえないと思えばこそ、ストレスなく練習に没頭できるのです。

サイレントで練習してると困るのがメトロノームです。

以前、次男の練習用に買ったメトロノームは音が大きく音量調節も殆どできないので、できるだけ家族に聞かれずひっそり練習したいという私の希望に沿いません。

そこで、メトロノームのアプリをスマホにダウンロードして、小さな音量でかけることにしました。そして、ヘッドフォンで聞くピアノの音量は更に小さくして練習しています。

この状態だと、自分の弾いている音色など殆ど確認できませんが、リズムを体に刻み込む練習だと割り切ってやってます。成果もちゃんて出て、先生に「リズムはバッチリ!」と言ってもらえました。

ピアノ好きな人にサイレントモードの話をすると、殆どの人はサイレントは嫌いと言います。サイレントで練習してたら上手くならないよ、みたいなことを言う人もいます。

それに、そもそも他の人に演奏を聴かれるのが恥ずかしいなんて、ピアノを習う意味ないじゃないかとかいう人もいるかもしれません。

全部うるさーーい!です。


私がピアノを習う意味は、
今日も楽しくピアノを弾くことです。

それが実現できて、私は今とても幸せです。

自分のオンリーワンのピアノライフ、邪道かもしれませんが、私はとても気に入ってます。


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