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毛根の神様に目をつけられそうなビルに通っている。

ところでわたしは医療脱毛のために美容整形外科に通っているが、下の階に、アデランスが入っている。
最上階なのでさいごまでエレベーターにのっていると、いろんな男性がひとつ下でおりる。このまえは、つなぎを着てあたまにタオルをまいたにーちゃんと、いいスーツをきて髪に不自由していなさそうなサラリーマンがおりていった。
だいたい1階下組と、ひとつのエレベーターをシェアするので、
「ああ、あなたもアデランス…」
と思って見送っているが、たぶん相手も
「まだおりないあなたは美容整形…」
と思っているだろう。
毛根を殲滅せんとたたかう最上階組と、製造せしめんと欲する1階下。しみじみと人間の業を感じさせる。

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と思って、入居ビル表をみたら、その下は脱毛サロンだった。毛根の興亡史

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ところで、母方の法事のとき、親類の頭髪が、すべからく滅亡していたことがあった。
あとできょうだいのあいだで話題になった。
真剣に弟が戦慄している。
「父方に似ているからだいじょうぶだって」
「いまだいじょうぶだったら、だいじょうぶだって」
「父方のおじいちゃんは死ぬまでふさふさやったから、だいじょうぶやで」
わりとガチめに弟におこられた。
はげましたのに。
だいじょうぶがゲシュタルト崩壊しそうだったのに。

毛根、それは煩悩。
 

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文乃 | 歴史フリークときどきコーチ
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