疲れたので箱根に行ってた
去年ちょっと疲れたときに箱根に行ってた。
2021年9月
又吉さんの「東京百景」を読みながら普通の電車で箱根に向かう。
箱根に逃げてみたのに、いつもの生活を引きずるような本のチョイスなのが謎。
「疲れたので」というロマンのかけらもない理由だったので、ロマンスカーに乗るのはなんか違うな、と思って乗らなかった。
(思ったほど乗車時間が変わらなかったのもあるけど)
いつかロマンスカーに乗るときのために、ロマンを貯めておく。
登山鉄道。
余裕のありそうな比較的ご高齢の方たち、自分が学生だったら友達にならなかったであろうタイプの学生グループ、ゆとりのあるカップル、女性同士の気兼ねない2人旅。
車内で流れる箱根の豆知識を一番しっかり聞いていた自信がある。
小田原から強羅までは15km、そのうちトンネルが2km。
これはテストに出る。
ホテルに続く地下道にグラフィティアートっぽい落書き。
山奥の公共物で自分のアート主張してんじゃないよ。
とりあえずベッド。
硬いマットの方が好きなのかも、という発見。
客が自分しかいない蕎麦屋で聞こえてくる会話。
国からの補助金と初めてのヨガについて。
すれ違う中学生に不審者と思われないか不安。
黒いジャージにパーカーで黒いリュック、マスク。
そんな奴は観光客ではない。
シャツでも着ておけば後ろめたさは軽減したかもしれない。
そういえば最近めっきりシャツ(襟の付いた)を着る機会が減った。
コロナで外に出る機会が減ったからなんだけど。
シャツ好きだったんだけど、どうやら人に見せるために着てたらしい。
事前に写真を撮るのが苦手。
ご飯を食べた後で、電車に乗った後で、景色から離れた後で気がつく。
でもそっちの方が正しいような気がしてきた。
ランナーとすれ違った。
走る準備をしてきてもよかった。
どこで食べてもカレーはうまい。
山は窓際に限る。
平日に観光地に行くことの弊害、お店やってない。
箱根美術館。苔むした庭。
水の音、鳥の声、工事の金属音。金属音。金属音。
丁度いいくしゃみだった、と子供。
カップルと相席ロープウェー。
眼下に広がる谷底に噴煙。
駄々をこねる子供がムキムキのお父さんに抱えられ湖をあとにする。
知らない虫がスニーカーに停まる。
駅伝のゴールはずっと向こうだった。
芦ノ湖は広い。
旅先で危うくコンビニごはんになりかける。
PICASSO館が良かったのは覚えている。
園内で大学生を100万人は見た。
人間坂歩いてなんぼ。
風呂は入れるだけ入る。
スマホでニュー・シネマ・パラダイスを見る。
弱ってる人間にふさわしい本を読む。
3冊読む。
帰る前にホットドッグとコーヒー。
昨日見つけたオシャレなカフェで食事したい、というまともな感性が残ってて安心した。
箱根だろうとカフェはカフェっぽい人を呼ぶ。
おしゃれビジネスマンとおしゃれ親子とおしゃれカップルと全身黒の一人旅行メガネ。
すぐそこに城が見えているのにたどり着けない。
かまぼこは買いそびれた。
小田原から乗る快速、人が等間隔に座る。
渇いた風が吹き込んでくる。
換気はすこぶる良い。
自宅の最寄り駅についても、強羅でのホットドッグを胃に感じる。
消化されたら、明日からのことを考える。