プロテスタント聖霊派の牧師の生態
SNSのプロフィール写真は妻と肩を寄せ合うツーショット。仲睦まじいだけでなく、妻をちゃんとしたがえる「聖書的な」夫ですよアピール。写真掲載の許可を妻に得たかどうかは不明。
名刺は非定型の縦置き、横書きのキラキラした薄型プラスチック製。表が日本語で裏が英語。そんじょそこらのビジネスマンより意識が高いつもり。でも名刺を受け渡す作法とか知らない。ちなみに名刺は近所の印刷屋でめちゃくちゃ値切って作らせている。
パソコンはiMacとMacBook。設定は信徒任せ。トラブルがあれば夜でも休日でも担当信徒にメール。移動先ではiPad。が、実はどれも使いこなせていない。iPhoneは最新、最大容量の20万近くする機種だがカメラアプリを起動したことさえない。ちなみに購入費は全額教会持ち。(「神の国」の働きのためなのだから、当然でしょう?」)
スーツは韓国でまとめ買いしてきたキラキラ光沢のあるやつ。舞台照明に映える効果を狙っている。若者向けの集会ではラフなジャケットにデニムにショートカットのブーツ。見た目の印象が大切だといつも神学生らに話すが、場合によってはあえて小汚い格好をして「見た目なんかどうだっていい、大事なのはハートだ」とか言ったりする。
説教は最初の10分はジョークの連発。とにかく笑わせて脳からセロトニンを出させる作戦。次の15分は聖書の小難しい話。わざと難解にするのは自分の知性を証明するため。最後の15分はキリストの十字架で思いっきり泣かせる。笑って泣けば信徒はおおかた満足すると思っている(実際それで満足する信徒が多い)。
説教内容よりパワーポイントを作るのに時間を掛ける。画像が盛りだくさんで、文字が浮かんだり消えたりする。スライドの移動は牧師の指パッチンに合わせて、担当信徒が操作する。牧師が無線操作すればいいのだが、指パッチンの方がカッコいいとのこと。
舞台にはお金を掛けている。天井にはズラリと並ぶスポットライト。大音量を出すために積み上げたスピーカー。高価な楽器類にモニター機器。後方左右にはスモークマシン(リハーサル中に火災警報を鳴らしてしまったことがあり、以来あまり使っていない)。「最高の神様を礼拝するのだから、最高の機材を使うべき」が口癖。そのわりに「壊れかけのギター一本でも最高の賛美が捧げられる」とも言う。壊れかけのレディオか。
ちなみに舞台に掛けたお金がどこから降ってきたかは神のみぞ知る。
海外の神学校を出て厳しい訓練を受けた、と事あるごとに話す。でも蓋を開ければ2年制の夜学で、かつギリシャ語を履修免除してもらったエセ準学士。でも黙っていればそんなこと日本でバレる心配はない。学歴詐称? いえ詐称なんてしてません。言わないだけです。それに牧師資格は公的なものじゃありません。神から賜る資格ですよ?(と牧師は語る。)
その学歴コンプレックスのせいか、「神学校で神学を学んでも頭でっかちになるだけだ」とよく言う。「大切なのは実践だ。実践の場で聖霊様が教えて下さるのが、最大のレッスンだ」と。
その実践の一つが「牧会カウンセリング」。一般のカウンセリングは心理学に基づいているが、「霊的視点が欠落していて致命的」とのこと。その点、牧師が行う牧会カウンセリングは霊の部分を扱えるから効果が高いのだそう。しかしある時、「カウンセリングなんて話を聞いて、祈ってあげればそれでいいんだよ」と簡単そうに言っていたのを、私は忘れない。
かくしてプロテスタント聖霊派の牧師は今日も行く。
※あくまで界隈のイメージを煮詰めたフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。