ふみなるのnote

キリスト新聞のライター。障害福祉で働く看護師。カルト化したキリスト教会に約20年。吃音症。映画評など書きます。

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  • 賛美を取り返したい

    教会で賛美を歌えなくなってから、また歌えるようになるまで

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被害者は何も悪くない

 11月12日から「女性に対する暴力をなくす運動」期間が始まる。それに先んじて「そのとき、あなたは、何を着てた?~What Were You Wearing?~」展が男女共同参画センター横浜で開かれた。「挑発的な服装をした女性が性暴力被害に遭う」という先入観に異議を唱えるためだ。  性暴力に服装は関係ない。加害者が性暴力に至るのは、被害者がどんな服装だったか(特に女性が挑発的な服装だったか)でなく、抵抗されなさそうか、発覚しなさそうか、後から訴えられるリスクがなさそうか、と

    • 【映画評】ジョーカーがもたらす混乱はスクリーンを越えるのか 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』

       ※2024年11月4日加筆修正しました。  前作で6人を殺害したアーサー・フレック(ジョーカー)はアーカム精神病院に収監され、裁判を待っている。弁護士は解離性人格障害を主張し、アーサーとジョーカーが別人だと証明しようとする。検事のハービー・デントは逆にアーサーこそジョーカーだと証明しようとする。外の群衆は反逆者としてのジョーカーの解放を叫ぶ。アーサー本人は黙して語らない。しかしリー・クインゼル(ハーレイ・クイン)と出会うことで、彼は行動を余儀なくされる。  本作はアーサ

      • 障害は「個性」なんかじゃない

         「障害は個性」と言う人は、例えば事故で失明したり四肢切断したりしたら「個性的になった」と言って喜ぶのだろうか。  それらしい理屈をこねて「障害は個性」を擁護したい人(主に健常者)がいまだに少なくない。けれど障害がある人の意思を無視して「個性だ」と押し付けるのは暴力だ。どんな理屈だろうと、どんな文脈だろうと、暴力は許されない。  障害を負って生きることがどんなことか、具体的に知っていたら「個性」という言葉はまず出てこない。その生きづらさは到底「個性」などという言葉で言い表

        • 【映画評】リベラルでもなく保守でもなく 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

           『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見た。  カリフォルニア州とテキサス州が同盟を結び、「西部勢力」となって政府軍に宣戦布告。アメリカは内戦状態となる。大統領は「勝利は目前だ」と強気にカメラに語りかけるが、実のところ敗戦濃厚。一方で戦場カメラマンのリーたち一行は、大統領に単独インタビューを行うためニューヨークから首都D.C.に向かう。  2021年の議事堂襲撃事件以来、分断が進むアメリカの国内情勢を見ると、本作は「起こりうる近未来」だ。それを「恐怖」とする映画評を幾つ

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          『虎に翼』の感想まとめ

           Threadsに投稿した『虎に翼』の感想が結構な数になったので、見出しを付けてここにまとめておく。 いなかったことにされるマイノリティ  轟さんが「俺たち(同性カップル)の存在はなかったことにされる」と言っていたけれど、「当時はオープンなゲイカップルなどいなかったはずだから時代考証的におかしい」みたいなクレームが番組に付いたそうで、やっぱり轟さんの予言通りになってるじゃんねと思った。 地獄を選ぶ  寅子さんとよねさんがそれぞれ別の場面で「どの地獄で戦うかは本人が決め

          『虎に翼』の感想まとめ

          「子どもを守る」という大義名分が覆い隠すもの

           世界的な児童人身売買をテーマにした映画『サウンド・オブ・フリーダム』が9月27日から上映されている。ティム・バラードという実在の人物を描く半自伝的作品で、制作はメル・ギブソン、主演はジム・カヴィーゼル、スタジオはAngel Studios。米保守右派と米キリスト教福音派とQアノンを混ぜたような布陣だ(三者の境界は近年曖昧になりつつある)。  本作が巧妙なのは、実際に児童人身売買が世界規模で行われており、ティム・バラードが設立した Operation Underground

          「子どもを守る」という大義名分が覆い隠すもの

          あなたの「聖霊のバプテスマ」はどこから?

          ※「異言を伴う聖霊のバプテスマ」の問題点をブログに整理したので、参考にしてほしい。 1 あなたの「聖霊のバプテスマ」はどこから?  「聖霊のバプテスマを受ければ、あなたも新しい力を得ることができます」  牧師は言う。  「神は求める者に豊かに与えて下さるお方ですから、聖霊のバプテスマも求めれば与えられます。ただし、少しも疑わず、必ず与えられると信じなければなりません」  それを聞いた私の胸を巡るのは、与えられなかったらどうしよう、という不安。それを打ち消すのは「新しい力」

          あなたの「聖霊のバプテスマ」はどこから?

          【映画評】そのマイノリティ表象は熟考されたものか 『ぼくのお日さま』 

           夏は野球クラブ、冬はホッケークラブで漫然と練習していたタクヤはある冬、フィギュアスケートの魅力に取り憑かれる。たまたま知り合ったコーチの荒川が指導してくれることになり、その教え子のさくらと共にアイスダンスの大会を目指すことになる。  『ぼくのお日さま』は雪が降る田舎町を舞台にした、一冬の青春物語。綺麗な画が多い。監督が言う通り、フィギュアスケートを題材にした珍しい作品だ。公開前の現段階では好意的なレビューをよく見る。けれど私は、特に後半の展開に幾つか危うさを覚えた。  

          【映画評】そのマイノリティ表象は熟考されたものか 『ぼくのお日さま』 

          【映画評】『エイリアン:ロムルス』(ネタバレなし)

           『エイリアン:ロムルス』を見た。  時系列は『エイリアン』と『エイリアン2』の間に位置する。前者のノストロモ号の残骸や、某キャラが再登場するのが懐かしい。他にもシリーズ4作をオマージュしたシーンが豊富にあるので、鑑賞前に復習するとより面白いかもしれない。  特に1作目の『エイリアン』との繋がりが、ストーリー的にもビジュアル的にも強い。『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』の時のような、数十年前の時代設定なのにテクノロジーだけ妙に新しい、といった矛盾が解消されてい

          【映画評】『エイリアン:ロムルス』(ネタバレなし)

          何をしているのか自分でわからない信仰者

           日本のキリスト教界の保守系教派はいまだに同性愛者差別を続けており、「LGBTQ」という大きな括りに対しても「反対」の姿勢を貫いている。自分の狭い観測範囲においてもこれは既に数十年継続している。呆れるし憤りを覚える。  しかし世界的に見ると2018年頃から、性的少数者をめぐる言説は大きく様変わりしている(特にここ数年は加速が著しい)。世界各国で次々と同性婚が法制化されたことで、同性愛者が政治的攻撃対象として成立しにくくなったのだ。もちろん日常生活レベルで同性愛者に対する差別

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          【映画評】環境破壊の警鐘、あるいは環境支配の宣言『ツイスターズ』

           オクラホマで大型竜巻が頻発し、調査研究のためにニューヨークで働くケイトが招かれる。渋々同行する彼女には大学時代、竜巻研究中に友人たちを亡くした過去がある。同じ頃、無謀な竜巻撮影で有名な映像クリエイターのタイラーたちも現地入りしていた。  『ツイスターズ』は1996年の『ツイスター』の28年ぶりの続編。前作で命懸けで設置した「ドロシー」を冒頭で学生たちが易々と設置していて、あの苦労は何だったのかと思ってしまった。それだけ技術が進んだということか。  頻発する大型竜巻は、明

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          【映画評】飛行機の中でサメに襲われる 『エア・ロック 海底緊急避難所』

           飛行機の中でサメに襲われる映画を試写した。  『エア・ロック 海底緊急避難所』だ。  メキシコに向かうイギリスの飛行機がバードストライクに遭って墜落し、海底に沈む。幸いコクピット側が前傾したため、尾翼側に空気が溜まってエア・ロック状態になる。生存者は7人。酸素が持つ数時間の内に救助が来るだろう、と一時は楽観するものの、機体の亀裂からサメが侵入し、決死の脱出を余儀なくされる。  91分と短尺なためコンパクトにまとまっている。サバイバルものにありがちな人間どうしの裏切りや、

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          【映画評】マルチバースに物申す 『デッドプール&ウルヴァリン』

           『デッドプール&ウルヴァリン』は『デッドプール』シリーズ3作目にしてMCUに本格的に合流した作品。2017年の『ローガン』でウルヴァリン役を引退したヒュー・ジャックマンの同役復帰も話題になった。他にも多くのサプライズ登場がある他、MCUが突入したマルチバースに物申す面もあり、何重にも見応えのある出来になっている。  マルチバース(多元宇宙)はMCUに続いてDCEUも導入した注目の概念だ。様々なバージョンの我々が存在する、という設定のおかげで、例えば前者の『スパイダーマン:

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          【映画評】可視化される理不尽な暴力 『ニューノーマル』

           一人暮らしのヒョンジョン(チェ・ジウ)の部屋に、予定外の点検業者が訪れる。街では女性を狙った連続殺人が発生している最中だ。不安を隠せないヒョンジョン。だが彼女の不安は、まったく別のところにあった。  『ニューノーマル』は6つのエピソードからなるオムニバス映画。それぞれの登場人物が別のエピソードにも顔を出し、緩やかな繋がりを見せる。4日間の出来事が、バラバラの時系列で描かれるスタイルは先行作『パルプ・フィクション』を想起させる。「新しい日常(ニューノーマル)」というタイトル

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          2024年パリ五輪の開会式に向けられたキリスト教保守派の「敵意」の正体

           2024年パリ五輪の開会式でマリー・アントワネットの生首が歌い、血しぶきが飛び散り、ヘヴィ・メタルバンドがシャウトし、ドラァグたちが舞い踊り、金の雄牛が掲げられた。強いインパクトを残したのは間違いない。テーマは「自由」とのこと。  それに対して「悪魔崇拝だ」「偶像崇拝だ」とキリスト教保守派が声を上げている。「ドラァグたちが気持ち悪い」という分かりやすい差別発言もあった(「これは信仰の表明であって差別でない」と彼らは平然と言うだろう)。  「生首」や「血しぶき」や「ヘヴィ

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          【映画評】『バッドボーイズ RIDE OR DIE』

           『バッドボーイズ RIDE OR DIE』を劇場鑑賞した。  シリーズ4作目にしてウィル・スミスの復活作。前作と直接繋がっており、マイクの息子やAMMOのメンバーが再登場する。シリーズ初となるスカイ・アクション、FPS感覚の戦闘場面、臨死体験を経てスピリチュアルに目覚めるマーカス、家族ができてパニック発作に襲われるようになったマイクなど、見所が多い。それぞれのキャラのサイドストーリーも豊富で、それでいてテンポ良く2時間にまとめられている。  前作で暗殺されたハワード警部

          【映画評】『バッドボーイズ RIDE OR DIE』