【映画評】『エイリアン:ロムルス』(ネタバレなし)
『エイリアン:ロムルス』を見た。
時系列は『エイリアン』と『エイリアン2』の間に位置する。前者のノストロモ号の残骸や、某キャラが再登場するのが懐かしい。他にもシリーズ4作をオマージュしたシーンが豊富にあるので、鑑賞前に復習するとより面白いかもしれない。
特に1作目の『エイリアン』との繋がりが、ストーリー的にもビジュアル的にも強い。『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』の時のような、数十年前の時代設定なのにテクノロジーだけ妙に新しい、といった矛盾が解消されている。個人的には『エイリアン4』の要素も結構強いと思った(最後の戦いはまさにそうだろう)。
また冒頭に登場する、主人公レインたちが住む街並みはどこか『ブレードランナー』のそれに似ている。これは同作と『エイリアン』の両方を監督したリドリー・スコット(本作の制作も務めている)が、両作が同じ世界観を共有していると発言したことに由来しているかもしれない。
そのようなテクノロジーの適度な古さ、造形の無骨さ、機械類の汚さなどに原点回帰を見る一方で、重力を利用した戦術や、アンドロイドに挿入するディスク等、新しいアイデアも登場する。懐かしさと新鮮さの両方を兼ね備えている。
監督のフェデ・アルバレスは『ドント・ブリーズ』シリーズで有名だが、本作でも「音を立ててはいけない」場面があり、さすがの緊迫感だ。銃があるのに使えない設定(『エイリアン2』と同じ)など、スリルの演出も上手い。
しかしストーリー展開に新しさはない。廃虚を探索してエイリアンに遭遇し、襲われ、反撃と脱出を試みる、という骨格はシリーズに共通している(他に展開のしようがないのかもしれない)。初めは怯えていた女性キャラが奮い立ってリーダーシップを発揮するのは『エイリアン』のリプリーと重なる。ちなみに『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』がいまいちだったのは、リプリーに代わる存在がいなかったからではないかと個人的に考えている。本作のレインが、リプリーのようになってくれたらいいなと願う。
ケイ役のイザベラ・メルセードは『トランスフォーマー/最後の騎士王』以来、個人的に推している。クールで勇敢な役柄が似合う俳優だ。しかし本作ではその鋭い眼光を完全に封印していて、そのせいか本人だとなかなか気付かなかった。彼女が主人公だったらさぞ強いキャラになったのではないか、と考えずにいられない。
『エイリアン:ロムルス』は9月6日(金)公開。
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