![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/42675256/rectangle_large_type_2_900a384bc2a83b27350a89ee932eb946.jpeg?width=1200)
Photo by
yamamoto15
しわしわな梅干し
台所の片隅に壺が置いてある。
何十年もの間、ばあちゃんが梅干しを漬け続けてきた壺だ。
ばあちゃんが亡くなった後、見よう見まねで私も漬けてみた。するとびっくり。適当に塩としそを足しただけなのに、ばあちゃんの梅干しとまるっきり同じ味が再現された。
ものすごく酸っぱくて、それがクセになる味。ばあちゃんが元気だった頃もいまも、毎朝一粒、ばあちゃん子だった私は口に放り込むのが日課だ。嫌なことがあった時は、ついでに一粒。口の中、のど、そしてなぜだか不思議と心までスーっとする。
ある時、壺の奥底に一風変わった梅干しが眠っているのを発見した。ほかのとは比べものにならないくらい、ものすごくしわしわ。細い糸がぐちゃぐちゃにほつれてしまったようにしわしわな一粒。
ずっと梅干しを漬け続けてきたばあちゃんの手に、そっくりだった。
すべてがわかった気がする。
壺の奥底から、ずっと見守っていてね。