赤い海、赤い森
海は青い。森は緑に満ちている。
そんな常識の中で僕たちは生きてきた。
そんな僕たちの五感には、思い込みという名のフィルターがかかっているみたいだ。
目を凝らしてみる。海は、汚されている。青さは澱み、どす黒い。ところどころ、赤みを帯びてゆく。
耳をそばだててみる。爽やかなはずの風が、ぬめっている。聴覚を静かに溶かすような音が森にも絡みつき、緑を奪ってゆく。
萌ゆる紅葉ではない、錆びたような衣を、木々が纏わされている。
僕たちは、知らぬまに大切なものを失ってきた。
小さな変化に鈍感だった。変化は塵のように積もり、塵は山となり、気づけば取り返しのつかない大きなうねりを生んでいた。
思い込みに流されないこと、五感を研ぎ澄ますこと。
もう、手遅れなのかもしれない。
手遅れなのかもしれないけれど、地球に敏感でありたい。
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