人工天気
20XX年。人は最新の科学技術を駆使し、世界中の天気をコントロールできるようになっていた。
会社、マンション、ショッピングモールが集まる街は毎日晴れ。気温も20度前後で固定され、至極快適だ。
雨が降るのは、限られた農村や牧場だけ。雪が降るのはスキー場だけになった。気温が30度を超えるのは海辺のリゾート地オンリー。そうやって使い勝手や用途に応じて地球上が事業仕分けされ、天気の役割分担も進んでいった。
やがて人は、思うに任せない天気の気まぐれが、いかに貴重だったかを思い知らされる。
どんより雨雲が漂えば憂鬱に。雪が降れば静かな物思いにふけりたくなる。そんな日があるから、青空の爽快さが身に染みる。寒くなれば寂しく人恋しくなり、暑くなれば開放的になる。
人の感情は、実は天気と一蓮托生だったのだ。
科学が天気を操る時。
人の感情はつるんと平たく、味気なく、薄っぺらくなっていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?