無観客試合
最後の夏は、思い描いていたのとは違う夏になった。
3年間の集大成になるはずだった大会が中止になった。代わりの試合は何とかできることになったけれど、誰も見には来られない。家族も、応援団も、クラスメートも、彼女も。
残念。とっても残念だ。
「この経験は決して無駄にはならない」と大人たちは繰り返す。本当にそうだろうか。ガチの大会に出られた方がいいに決まってる。お世話になった人たち、大好きな人たちに真剣勝負を見てもらう。そして、勝って泣き、負けて泣く。その方がいいに決まっている。
でも、いまは、そういうことは考えないようにしている。
誰も見てくれなくたって、全部、出しきってやる。だって、最後の夏だから。
それがせめてもの意地ってもんだ。
見てろよ、コロナ。