Resistance
一億総中流という言葉が、かつてあった。
多分、その通りだったのだろう。大多数の人が、それなりにやりがいを持って働いていた。それなりにお金を稼ぐことができて、生活に不自由を感じることも少なかった。
その陰で偉い人たちは、若い世代、若い世代へと目に見えないツケを回してきた。そして例のウイルスが最後の一撃を加えた。
いまや、やりがいを探すなんて贅沢の極み。食いつなぐそのこと自体に不安を覚える。老後はさらに不安だ。その不安に太刀打ちできる術はない。だから、ただ目を背けるだけ。
何かに希望を抱きながら日々を過ごす。一日を終えた時、それなりの安堵と充実を感じられる。そんな普通の生き方が、許されなくなった。
普通に生きてやるんだ。
気持ちだけでも、粋がってやるんだ。
それこそが儚く、でも尊い、目に見えない敵たちへの抵抗だ。
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