リモートワクチン
あれは何年ほど前だっただろうか。謎のウイルスが世界に蔓延し、感染拡大を防ぐため、人は人同士で会うことをやめた。
代わりにコミュニケーションの主役となったのは、互いのパソコンやタブレットでつながるリモートワークやオンライン授業。いまや上司も部下も先生も生徒も自宅で全てを完結させている。
ワクチンが開発されたのは、つい最近のこと。ただ、病院はまだ重症患者の治療で手いっぱい。しかも予防接種には特殊技術が必要だという。だから人は人同士で会うことを再開していない。科学者たちはワクチンに続き、今度は「リモート接種」を可能にするAI開発に躍起となっている。
その技術支援に政府は躍起。市井の息苦しい日常を置き去りに。
慌てふためくばかりの人類を遠目に、彼らはせせら笑うのだった。
「僕ら、もう地球からは撤退したのにね。自然破壊を食い止めるために人口を減らすというミッションは果たしたから」
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