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懐かしの朝食風景
珍しく土日の休日。
いつもよりもゆっくりめの8時に起きて、家の片付けをしたのち、11時頃に遅めの朝ごはんをいただく。
冷蔵庫の中をみると使いかけの食材ばかり。たまご、ベーコンの切り落とし、菜の花、れんこん、豆腐。
いったい何を作ろうか?
実家では、日曜日は必ずパンだった。
そして、必ず母(ときどき父になる)に聞かれるのが「半熟?両面?」。目玉焼きの焼き加減は申告制だ。
で、普段は目玉焼きときどきベーコンエッグにもなる。
パンはだいたいグルメソフトで、マーガリンが嫌いな私は、だいたいジャムかそのままで食べる。
父はいつも目玉焼きをパンに乗せ、豪快に食べるスタイル。私と妹は目玉焼きの黄身のところに穴を開け、そこに醤油を数滴垂らし、卵と混ぜた後、そこに白身をつけて食べていた。
ぽかぽかした春の光が部屋に入ってきて、電話台にしていたラタンの引き出しやオレンジベージュのソファーがぼんやり明るくなっている。
小さい団地で暮らしていたのに、あの頃はすごく大きな部屋だった。バルコニーにずっと座って外を見ていた。
嫌なことばかり思い出す幼少期の、数少ないほかほかした思い出。
冷蔵庫の中を見ていたら、あの頃のベーコンエッグを食べたくなったので、作ってみた。材料もちょうどあるし。
今日は、菜の花も一緒にソテーする。適当に調理バサミで切って、フライパンの端っこに入れる。
ベーコンを並べて火をつけ、フライパンが温まったところで、卵を割り入れた。
そういえば、初めて教えてもらった料理も目玉焼きだったかも。
水を少しだけ入れて、はい!蓋を閉める!母の声が聞こえる。パチパチいうから、気をつけて。
今はもう自分でなんでもレシピを探して作るけれど、たぶん料理の基礎部分は母に作ってもらった。
今でいう食育のようなことを普通にやってくれていて、嫌いな食べ物はほとんどないし、ハンバーグ、餃子、煮物の味付け、なんでも手伝わせてくれた。
「甘辛くしたいから醤油とみりんと砂糖だな」となんとなく味付けの勘が働くのも変に凝った味付けじゃなかったからだと思う。
私の記憶はいつも食べものとか香りとか、ちょっとしたきっかけでブワァと溢れ出てくる。
あまりに不意に現れるので、身構える間もない。なんとかならないものか。
焼けた目玉焼きを口に入れる。菜の花のほろ苦さと目玉焼きと油のほんのりとした甘味、ベーコンの塩っけがバッチリ合う。でも当時の味にはならない。
記憶力がなまじ良くて、昔の詳細なことまで覚えすぎていて、過去に後ろ髪を引っ張られそうになることばかりある。
それでも、もうあの頃の私はいなくて、今の私は私の味を作って生きてるんだなあ。
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