手描きイラスト技法で考えるAIイラストの作り方
AIを使うとはいえ、イラストはイラストです。
AIは特定の工程を効率化するための新しい技術にすぎません。
AIイラストを作るときでも、従来の手描きイラストを描くときと同じ考え方・技術があると効率よく作ることができます。
更新履歴
2024-10-15: 誤字を修正。
イラストを描くおおまかな手順
イラストを描く工程には、大きく次の3つの手順に分けられます。
対象を選ぶ: 対象はどのようなものか
演技をさせる: 対象にどのような演技をさせるか
構図を決める: 対象をどのような構図でイラストにするか
写真撮影で例えると、次のようになります。
モデルを決める
モデルにポーズを取らせる
モデルを撮影する
1. 対象を選ぶ
# 体型
1girl, loli, flat chest, caucasian, pale skin, slender,
# 髪型
blonde hair, long hair, straight hair,
# 顔
aqua eyes, rosy cheeks, freckles, side-swept bangs,
# 衣装
navy blue blazer,
white button-up shirt, red and gold striped tie,
pleated gray skirt,
white knee-high socks,
brown loafers,
対象は一般的には人物です。
他には風景や、動物、無機物なども考えられますが、この記事では人物に絞って解説します。
人間の場合は、キャラクターデザインに相当する工程です。
キャラクターデザインのためのプロンプトの分類として、私の場合は次の4つに大きく分類しました。
体型: 全体を決定する要素
髪型: 髪に関する要素。同じキャラでも髪型が変わる場合がある
顔: パーツが細かい。後ろを向いている場合は映らない。同じキャラでも化粧部分は変わる
衣装: 服装。キャラクター性を補強する
それぞれをさらに細かく見ていきます。
体型
外見年齢: その年齢に見える外見。2D系モデルの場合は数字ではなく見た目を記入する
胸: 女性の場合は胸の大きさを指定。外見年齢に強く影響を与えやすいので上と一緒に考える
体型: 体型。痩せ型や肥満体型など
民族: 人種・民族的な分類。3D系モデルであればその民族的な顔立ちに傾く。2D系モデルの場合はほぼ影響がないので無視して良い
肌: 肌の色。日焼け具合。質感
髪型
髪色
髪の長さ
髪質: 直毛・縮毛など
髪型・髪型に影響するアクセサリー: 髪型は同じキャラでも変化しやすい。(髪を結っている・下ろしている)
顔
ここでは表情に関わるプロンプトはまだ指定しません。
目: 色や形状。かなり細かく設定できるが、色だけでも設定しておくこと
前髪: 髪で目を隠れさせたり、後ろを向いた際には顔パーツと一緒に見えなくなるので顔の一部として考えると都合が良い
化粧: うまく使えると個性が際立つ。同じキャラでも化粧しているかは状況によって変わる
その他の要素: そばかすや牙など
衣装
種類は多岐に及ぶので厳密な分類は難しい。
帽子
ジャケット・コート
シャツ・ネクタイ
ズボン・スカート
靴下
靴
下着
その他アクセサリー
など。
キャラクターデザインのために
厳密にキャラクターデザインをする場合は、プロンプトを詳細に指定します。
最低でも上の要素は全て埋める必要があり、指定しなかった箇所はランダムにブレると考えてください。
各衣装の色もきちんと指定してください。
また、次の要素を事前に考慮しておくと、後でキャラクターのブレが生じにくいでしょう。
それぞれを脱がせた場合の状態はどうなるか
横・後ろから見た場合にはどうなるか
そのAIモデルで出やすい衣装であるか
2. 演技をさせる
# 表情
raised eyebrow, smirk, teeth, parted lips,
# 手の動き
hands on hips,
# 身体の姿勢
standing, legs apart,
演技では、対象がどのように振る舞うかを指定します。
デザインしたキャラクターにイラスト中ではどのようにしていて欲しいのかを指定します。
手書きでイラストを描く際には、デザインしたキャラクターに様々なポーズを取らせ、魅力を引き出すためのアイデアを出す工程です。
顔の表情
手の動き
身体の姿勢
顔の表情
表情は目や口の細部のパーツまで指定できます。
初心者のうちは、おおまかな感情表現タグを入れておけば問題ありません。普通の表情で満足できなくなったら顔パーツ単位で指定しましょう。
手の動き
手は忘れがちですが、顔の次に豊かな感情表現ができます。手に演技をさせると、イラストがずっと良くなります。
AIではこれまで指の表現が苦手でしたが、最近のモデルはかなり精度が上がってきているので、積極的に活用しましょう。
身体の姿勢
手以外の身体は、そのキャラクターの重心の問題があるので、胸から足までを一括して考えます。
細部まで厳密に指定するのは難易度が高いので、今回は省略します。
とりあえずは「立っている」「○○に座っている」くらいを指定しておけば、あとは上手いことやってくれるので、最初のうちはあまり難しく考える必要はありません。
慣れてくるといろんなポーズを指定できるようになります。
3. 構図を決定する
# 画像左
# 表情補正
looking down, looking at viewer,
# 画角
from below, perspective, foreshortening,
# 範囲
cowboy shot, # 靴と靴下のプロンプトを消す
# 背景
blue sky, cloud, trees in spring, flower petal,
# 画像右
# 表情補正
looking up, looking at viewer,
# 画角
from above, perspective, foreshortening,
# 範囲
full body shot,
# 背景
on brick road,
演技をした対象に対し、カメラの方を動かして構図を決定します。
手書きでイラストを描く際には、イラストのラフを描きまくって構図を決定する工程です。下絵ができたら、あとはこのまま完成まで書き込むだけです。AIでは一気に着彩まで進みます。
様々な要素が考えられますが、まずは次の3点に絞って解説します。
画角: 対象にカメラをどんな角度で向けるか
範囲: 全身を映すか、拡大して部分的に映すか
背景: 背景には何が映っているか
他にも照明・画風・加工方法などさまざまな要素があります。
画角
水平方向と垂直方向をある程度決定できます。
一例を挙げると、
下から見上げる: カメラ(視点)よりも対象の方が立場が強くなる
上から見下ろす: その逆で、対象が弱くなる
上の画像を例にすると、
画像左: 対象キャラの方が優位な立場であることを表現できます
画像右: 生意気そうで可愛らしい印象になります
2枚のイラストは同じ表情、同じポーズですが、それぞれ異なる印象になるのがわかるかと思います。
範囲
顔だけから、全身まで対象をどのように映すのかで、見る人と対象との距離感が変わります。
上の画像では、
画像左: 腰から上だけなので対象との距離が近くなり迫力が増す
画像右: 全身が入っているので、対象の小柄さが際立つ
このように、どのような角度と範囲で構図を決定するかで、読者と対象との関係性を表現することができます。
背景
上で構図を決めたら、後ろに何が映っているかを考えます。
画像左: 下から見上げているので、空や木がだけが映る。地面にあるものは映らない
画像右: 上から見下ろしているので、道や地面にある要素だけを指定する
写っていないプロンプトを削除する
AIイラストでは、構図用のプロンプトを追加するだけでなく。映っていない要素のプロンプトを外す・入れないのが重要になってきます。
バストアップの構図なのに、靴のプロンプトが入っていると、足元が映るように無理な体勢をとる可能性が上がります。
後ろを向いている場合は、顔に関する要素を削除しないと、高確率で振り返るイラストになります。
プロンプトを抜いても描かれる場合はネガティブの方に記入しましょう。逆に見えるようなった要素をポジティブに入れるのも忘れないようにしましょう。
イラストの完成度を上げるには
さらに完成度を上げるには、そもそも論として、出力したイラストのどこがおかしくて、どう直すべきなのかを理解し、それをAIに明確に指示できなくてはいけません。
必要とあらば手書きで直接描く技術も求められます。3番左の画像の場合、パンチラを隠すために花びらを描き込んで、i2iで馴染ませています。
これらは従来のイラストを描く技術に他なりません。
もし、今回の記事内容が参考になった場合、イラストの基礎理論を解説しているWebページを眺めてみることをおすすめします。きっと役立つ情報をあるはずです。
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