セルビアの民族音楽と舞踊②シュマディヤ地方
1.シュマディヤについて
シュマディヤ地方はセルビア中央に位置します。
「シュマディヤ」の「シュマ」は「森」という意味です。
かつてこの地方が森におおわれていたことから、この名前がつきました。
シュマディヤに位置する街トポラ
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Topola_Sumadija_Srbija_(Djordjev_grad).jpg Author :Hugo161072
シュマディヤはセルビアの中央に位置しているので
周りの国からの影響が少なく
音楽や踊りもセルビア独自の特徴を持っています。
2.シュマディヤの音楽
シュマディヤの音楽は速さによって3種類に分けられます。
①ゆっくりしたテンポの音楽
②適度なテンポの音楽
③速いテンポの音楽
・・・そのままですね
①ゆっくりしたテンポの音楽から順に説明します。
①ゆっくりしたテンポの音楽
ゆっくりしたテンポの音楽は4分の2拍子で
装飾音(小さい飾りの音)がたくさんつきます。
基本のメロディーはシンプルなのですが
小さい飾りの音が沢山つくのでとても複雑に聞こえます。
ここで基本のメロディーと
装飾音付きのメロディーを弾きました。
装飾音がつくと、かなり雰囲気が変わると思います。
装飾音は数も種類もたくさんあります。
また、装飾音付きの楽譜はないので
他の人に教わるか耳コピしなければなりません。
「ゆっくりしたテンポの音楽」は
基本のメロディーがシンプルなので
簡単に思われがちですが、実はとても難しいです。
「ゆっくりしたテンポの音楽がいちばん難しい」
というのはミュージシャン共通の認識です。
ゆっくりしたテンポの曲を弾きました。
【Medeno kolo (by Ljubisa Pavkovic)】
奥さまにささげた曲だそうです。うらやましい。
私も誰かに曲を作っていただきたいです。
②適度なテンポの音楽
適度なテンポの音楽も4分の2拍子です。
ゆっくりのテンポの音楽より
テンポが速くなり、装飾音の入る時間が少なくなるので
装飾音が少し減ります。
こんな曲が代表的です。
【Cicino kolo (Traditional)】
また「適度なテンポ」というだけあって
ダンスをするのに最適です。
セルビアでは、結婚式や卒業式など
お祝いの席でダンスが踊られます。
セルビア人ならだれでも知っている
シンプルなステップがあって
老若男女問わず皆で手をつないで踊ります。
結婚式などではテーブルの合間を縫って列になって踊り
その数は100人にも200人にもなることがあります。
ちなみに、このシンプルなダンスステップ
学校などでは習わないそうです。
皆、実地で覚えています。
結婚式ではバンドの生演奏が5,6時間(!)ほどあります。
その間には、ダンス曲の他にも色々な曲が演奏されますが
ダンス曲がかかると皆すぐに席を立って手をつないで踊り始めます
どの曲がダンス曲か分かるのも
すぐに席を立てるのも
ステップを踏めるのも
皆がお祝いの席や、そこでのダンスを
ずっと楽しんできたからなのだなと思います。
結婚式の様子です。
③速いテンポの音楽
速いテンポの音楽も4分の2拍子ですが
とにかく速いので「Virtouzo(名人・巨匠)の音楽」と呼ばれ
音楽家が自分の腕を見せるために弾くことが多いです。
踊りの伴奏というより
聞いてもらうための曲が多いと思います。
こんな曲があります。
【Knjazevacko kolo (by Lazar Panajotovic)】
3.シュマディヤの民謡
民族音楽はダンスの伴奏としてだけではなく
歌の伴奏としても発展してきました。
シュマディヤの民謡も
民族音楽と同じ4分の2拍子で
装飾音がたくさんあります。
ゆっくりしたテンポの民族音楽と似ています。
こちらは「イバル川よ流れを止めてくれ」という歌です。
イバル川はシュマディヤの南部を流れ
流れが速いことで有名です。
By Olja Simović - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=52397663
“川向うに一軒ぽつんと立った家に
愛おしい女性が住んでいて
私が来るのを待っている。
だからイバル川よ、流れを止めてくれ”
という歌です
4.シュマディヤの舞踊
シュマディヤの民族舞踊の特色は
足の交差が多いことです。
男女交互に並び、手や腕をつないで
足の動きを中心に踊ります。
基本の体形は
輪になって踊りますが
輪が閉じることなく、一部が開いている
オープンサークルと呼ばれる体形です。
このとき輪の先頭の人と末尾の人の役割が重要になります。
輪の先頭の人はダンスの歩幅を決めます。
歩幅が大きければ、ダンスは速くなり
歩幅が小さければ、ダンスは遅くなります。
また、他のダンサーは、先頭の人のステップと
同じステップを踏まなければなりません。
ですので、先頭の人は踊りのステップも決めています。
例外は、末尾の人で、
末尾の人だけは(全体を乱さない程度に)
自分の好きなステップを踊ることができます。
シュマディヤのダンスです。
50秒目から、先頭と末尾の人が登場します。
末尾の人が次々ダンサーを誘っていって
大きな輪を作ります。