ラップ曲を作ってみた。~曲作りを振り返り、セルフプロデュースを考える~
今年の3月頃まで、約1年かけて曲を作っていました。
音楽についての記事をこれから書いていくにあたり、アーティストのように実際に曲を作ってみる体験をしてみたかったからです。
今回の記事は、自分の曲を公開しつつ、自分でトラック作ってラップリリックを書き、ラップをしてみたプロセスを振り返ってみたいと思います!
とりあえず試しに曲だけ聴いてみたい方はここまで
曲のタイトルは「haut dans le ciel」。
歌詞全部は、一番最後にまとめて載せますので、リリック読んでみたい方はそちらのページまで飛んでみてください。
曲制作を振り返る
トラック制作について、ラップリリックについて、ラップフロウなど様々な点について振り返っていきます。
トラック制作について
「Ableton Live11」を使用して制作しました。
楽曲制作は大学時代にバンド活動をしていた時以来だったので、相当なブランクがありました。
新しく曲の構想を練った上で制作する余裕は精神的にも時間的にもなかったので、大学時代に作った曲のリアレンジという形でトラックを作ることにしました。
大学時代、明確にリスペクトしている曲がありました。
当時作った曲も、リアレンジした現在のトラックも、その曲の要素を大きく反映して制作しています。(シンセパッド、キーボードの和音弾きや打楽器系の打ち込みの部分です)
それ以外にも、自分が作るなら、自分が好きな要素は全て盛り込みたいという思いがありました。
楽曲制作中、「Phonk(フォンク)」というジャンルの音楽に出会い、それがバルトークやストラヴィンスキー曲の和音連打に活かせるんじゃないかと思いつき、曲全般のベースパートやサビのシンセ和音連打にその要素を取り入れています。
「ボレロ」の主旋律に五度上の旋律を重ねる手法も2番で、サンバのリズムもハイハットで取り入れています。マリンバ系の音も前奏、間奏に入れています。
トラックに関して、好きな要素を全て盛り込んでみた結果、絶対に自分じゃないと作れない個性が出せたと思っています。何より作ってる自分が楽しかったです。大満足です。
ラップリリックについての解説
このパートがおそらく一番長くなります。
リリックに興味があればこのまま読み進めてみてください。
自分の楽曲を解説する長文を書くというスタイルは、こちらのnoteに影響を受けています。
なので、私も「野暮ったく」可能な限り言葉を尽くして解説してみたいと思います。
個人的なことですが、卒業した大学はマスコミ、エンターテイメント系に強い大学でして。
もちろん、私もそんな世界で活躍できることを夢見ていました。
ですが、それは叶いませんでした。
先輩、同期、後輩のみんながエンターテイメントの世界で活躍していることにものすごくコンプレックスを抱いていました。
そんな中、「普通の」会社員だった私はまさに「モブキャラ」。
時はブログ文化が盛り上がっていたり、Twitterの黎明期だった頃。
ハンドルネームとアイコンを決めて「トランスフォーメーション」して飛び込んでみたネットの世界は、(一定の倫理観さえ守られていれば)好きなことが言える場でした。
まさに自分にとっては「桃源郷」。
好きなアーティスト(ダンスボーカルグループ系多め)の曲を聴いて、ライブ映像やMVを見て、SNSで好き勝手書いて、お互いコメントし合って。
とても楽しかったです。
このパートでは、分かる人には分かる、ある人物のことを描いています。
とにかくその方の、その時(「中華料理」を喰らいついている時)の目がギラギラしていたんですよね。その姿にとても衝撃を受けて。
SNSの中で承認欲求満たして心地よく過ごしていても、現実世界では「普通の」会社員としての戦いがある。
この方や、この方の書くリリックのおかげで、現実世界でちゃんと戦おうと思えたんです。
「Don't deny your past.」については、後ほど語るとして…
「I owe who I am to the lyrics you wrote.(今の私があるのは、あなたが書いたリリックのおかげだ)」に、感謝の気持ちを込めています。
「松明(a torch)」は自分にとって、とても大切なワードなので、歌詞の中にたくさん出しました。
2番の歌詞は、全部「サッカー」のネタに振り切ろうと決めていました。
自分でリリックを書かなければならないとなった時、私は自分の中にあるものしか表現できないタイプだと思いました。
であれば、今何かハマっていることと言えばサッカーくらいだなと。
あとは、この歌詞に出てくる「君」がサッカーをしていた方なんですよね。
「あるチーム」は今応援しているチームのことですね。
ネットミーム化した当時の監督の発言は、「これがフットボールだ」を英訳して検索すると分かると思います。と言いつつ、公式動画を貼る。
このフレーズを初めて知った時、サッカーって人生みたいだなと思ったんです。だから、私にとっては、This is my life.
「でもふと思った
試合ってまるで人生のようだ
分かりやすい実力差
ボール取られ抜かれ
簡単にゴール決められ
届かないゴールが
何千マイルも先にあるみたいだ」
の部分は、現実世界で上手くいかない自分自身を表現しています。
だからこそ、当時「君」がとても眩しかったんですよね。この曲は今でも涙なしで聴くことはできないです。泣いちゃう。
この部分は、完全にある曲のオマージュです。
茨城県民なので、レペゼン茨城で「カシマ」。
鹿島アントラーズは、Jリーグ発足時からずっとトップリーグに居続ける名門チームです。
サッカーチームのある海外の都市を二つ並べる必要があったので、日本人が所属し活躍する海外チームのある都市を二つチョイスしました。
(※どちらもイングランドの都市になってしまい、後から「全然世界ぐるりめぐってねえええ!!」とやや反省しました…)
今回のラップでは、高速ラップに挑戦してみたかったので、この曲は何百回と練習しました。
何百回ラップすることで、何となくではありますが、その曲を作ったアーティストの思考が自分に乗り移る感覚になるところが新鮮でした。
あと、サッカー選手の名前はどうしても入れたかったので、遠藤航選手と三苫薫選手の名前を盛り込んでいます。
最後に入っている「ゴォォーーーーーーール!!!!」の声は、「あるチーム」のスタジアムDJの方をイメージして叫んでいます。私の声です。
自分で自分をクリエイトする。これも、ある曲の歌詞に影響を受けています。
そして、何回踏みつぶされても生きてみせます。
この部分は、拡声器使って演説してる雰囲気を出したかった。
ナレーションパートは、低いトーンでスピーチした後にリバーブばりばりかけて、マドンナ曲にありそうなナレーションにしてみたかった。
全体的に英語パートには自分の思いを込めています。
曲で表現しているその方は、現在では経営者やプロデューサーとしての方が世間的には知られていると思います。
でも、今現在インタビューで語られる信念みたいなものは、その方の過去曲でもいっぱい表現されていると思いますし、私はそのリリックの数々に救われてきました。今の自分があるのは、今生き延びているのはそれらの曲のおかげです。
だから、これまでその方にはいろいろあったとは思うのですが、過去の活動の全てを否定して欲しくないな、なかったことにはして欲しくないな…という思いを込めてみました。
「ラップ」がしてみたいと思ったのも、その方がラッパーだから。ラップに対する憧れがあったからです。だから「ラップ」で表現しようと思った。
ラップフロウとレコーディングについて
…とは言え、もともとラップをしていた人ではないので、自分には自分なりのラップフロウがなかった。フロウに関しては本当にI have no ideaで。
それを打開してくれたのが、周りの方のアドバイスでした。
私の声やキャラなどから、こんなアーティストのフロウが合うんじゃないか?というアドバイスをたくさんいただきました。(あの時はありがとうございました!!)
THA BLUE HERBとか合うんじゃないか。
TOKYO No.1 SOUL SETのBIKKEさんのフロウが合いそう。
三連のリズムを入れるといいんじゃないか。
ポエトリーリーディングもよさそう…などなど。
上記の曲をとにかく何度も聴いて、イメージして、自分のフロウに活かしたつもりです。
レコーディングは目黒のいろはスタジオで行いました。
たくさん練習して臨みましたが、時間も限られていたのと、あがり症なのでそうそう上手くラップできないだろうなと。
だから、各セクションに分けてレコーディングをし、数回録音してみてある程度納得したらどんどん先に進めるというやり方をとりました。
途中の高速ラップは何度やっても通しで成功せず、上手くいった部分を切り取って差し込むという魔法を使っていただきました。笑
いろはスタジオの林田さんには、「自分がこうしたい」という要望(声の加工やエフェクト)は全部叶えていただきました。
それだけでなく、私の未熟なトラックの音のバランスを整えてくださいました。
また、現場で林田さんから「こうした方がいいんじゃない?」と提案があり、それらも取り入れてレコーディングしました。
林田さん、素敵な曲に仕上げてくださり、本当にありがとうございました!
曲の制作は、自分の好きなことややりたいことだけを盛り込むことだけでも成立するけど、自分を魅せるために必要なことは自分だけでは気づかないこともあるから、他者の意見や周りからの刺激も必要なんだなと。それらを自分なりのバランスで取り入れる。そういった一連のことが「セルフプロデュース」なんじゃないかと思いました。
また、今の日本の音楽シーンの中で活躍するアーティストなら、自分たちの曲をどんなところまで届かせるかということを考えて計算した上で、いろんな要素を盛り込んでいるんだろうなとも思いました。
この経験を、今後音楽について記事を書く時に活かしていきたいと思います!
「haut dans le ciel」リリック
ちゃんと韻(主に脚韻。たまに頭韻)を踏むことを意識したリリックになっていると思います。