栄養士の専売特許ってなんでしょう?
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自分の頭の中の整理も兼ねてちょっと栄養士の当たり前を再考してみようと思いついたコラムです。
今回もまた身も蓋もない疑問。でも考え直したら意外と深かった…。
1. 名称独占資格と業務独占資格
栄養士・管理栄養士は名称独占資格であって業務独占資格ではありません。医師免許と比べると違いがわかりやすい。
医師免許は業務独占免許だし、名称独占資格でもある。
栄養士・管理栄養士は名称独占資格だけど、業務独占資格ではない。栄養士とか管理栄養士と名乗らなければその業務をやってもいいことになるんだよね。
だから必要があれば診療の際に医師が栄養指導をするだろうし、行政だったら保健師や看護師が栄養指導を行ったりもする。◯◯トレーナー的な方が栄養指導をしているのもよく目にする。
あ、ちなみに病院での栄養指導(療養のため)は医師の指導が必要です。
名称は独占されてるけど、その業務は誰がやってもいい。そんな栄養士・管理栄養士の専売特許ってなんでしょう?
2. 栄養士・管理栄養士の固有業務
栄養士法に規定されているように、栄養士・管理栄養士の業務は「栄養の指導」です。細かいけど「栄養の指導」と「栄養指導」は別物。日本栄養士会の定義をみつけたので引用。
要は、食事の提供(給食)、栄養指導(支援)、栄養状態の管理(栄養管理)ですね。そして職域によってその度合いが若干変わってくると。
ちなみに、日本栄養士会は「代謝に介入して制御するという 「栄養の指導」の本質論からすると、この行為は明らかに 医療行為性を持っているといえます。」と言ってます。
タイトルの問いに答えるとすると、栄養士の専売特許って、栄養のスペシャリスト!って名乗った上でこの「栄養の指導」ができること(もうほんと当たり前のことですみません)。
でも今回私の疑問がよりモクモクしてしまったのはそっちじゃなくて、情報が民主化された現代でどこまでそれが通用するんだろう?ってこと。
3. 情報が民主化された現代における栄養士の専売特許は?
情報の民主化ってつまりは、「ググったら出てくる」ってこと。栄養士の業務はコンピューター化されにくらしいので、そっちの心配はとりあえず考えないでおくけど、今はレシピサイトで検索すれば作りたい料理のレシピがすぐに出てくるし、医師や◯◯トレーナーさんが進める「▲▲ダイエット」もちょっと調べれば山ほど出てくる。そんな時代だから情報収拾のセンスがある人ならある程度の知識はつけられるはずだし、栄養指導をするにしても伝え方が上手ければある程度はうまくいくはず。
でもきっとそこで得られる知識ってどこか断片的というか、応用が効かなくなりそうな気がするんだな。情報が民主化されても栄養士と同等の知識を持てるかどうかは疑問。栄養士免許とか管理栄養士免許って、取るの意外と大変。
栄養士免許は専門学校に通えば最短2年で取得可能だけど、昼間部のみなので通信とか夜間はない。
管理栄養士免許を取るには四年制の管理栄養士養成校に通うのが最短。栄養士免許を持ってたら受験できるけど、実務経験も必要になる。もし2年制の専門学校卒なら3年以上の実務経験が必要。
ちなみに私は四年制の栄養士養成校出身なので1年の実務経験が必要だった。当時は1年見込みの実務経験でOKだったけど、今は出願時点で実務経験が1年経ってないといけないらしいから実質2年かな。だから2年制の専門学校卒だと実質4年の実務経験が必要になる。
4. 合格率の低い?管理栄養士国家試験
2019年(第33回)の合格率は60.4%だったそうで。私の時はどうだっけな?と思って調べたら5割なかったらしい。この合格率ってのは新卒と既卒がごっちゃになってるんだけど、新卒と既卒で分けると合格率にめっちゃ差が出る。新卒ってのは管理栄養士養成課程の方々ね。今回は管理栄養士養成課程(新卒)で95.5%、管理栄養士養成課程(既卒)で18.0%、栄養士養成課程(既卒)で20.4%だったそうな。
管理栄養士の養成課程では、学校で国家試験対策をみっちりやってるらしい。そりゃあ養成施設なんだからそうだよね。私が卒業したところは実務経験も必要だったし、自分で勉強しないといけない状況だった。自己学習で取得しようと思ったら難しい資格だという印象を持ってもらえれば幸いです。
でもなぁ…、そんな管理栄養士の資格を持っている私たちが、その資格を活かせているかというと疑問。
5. 市場価格の低い?栄養士
栄養士って資格取得までになかなかコストのかかる取得だと思うんだけど、コスパは悪いと思う。「栄養の指導」は別に栄養士や管理栄養士でなくても出来る(やってもいい)ので、業務を行う上で必須の資格ではない。だから市場価格が高い資格ではない。
栄養士や管理栄養士が「私たちこそが栄養のスペシャリストです!!」と声をあげたところで、ちゃんと社会に認知されてない気がする…。
今もそうだけど「栄養士って何する人?」ってよく聞かれる。知ってる人でも「あ〜、学校の給食作ってる人ね」とか「病院にいる人ね」という感じ。栄養のスペシャリストとは言っても、具体的に何をしているのか知られていない。栄養士と管理栄養士の違いを知ってる人に出会うこともほとんどない。
(あれ、これって私だけ?地方だからかしら?)
「だから声をあげるんだ!!」という動きは大事なことだと思うけど、主張するだけじゃ変わらない。誰が見てもわかるような実績を形として残していかないと。
(あ、ちなみに私は何かを説得する時にみっちり資料を準備するタイプです)
医療行為性のある業務のはずなのに、形となっている実績を探すのには苦労するのが現状。その実績のことを科学的根拠というのだけど、それがまだまだ十分じゃない。
栄養士の業務って実績を残しにくいなぁ、とは思う。栄養士の業務は前述の通り、食事の提供(給食)、栄養指導(支援)、栄養状態の管理(栄養管理)なんだけど、これって日常生活ですごく近いことをでやってる。ご飯を作ってくれて、体調を気遣ったご飯を考えてくれて、時にはアドバイスもしてくれる。いやこれってお母さんじゃん、と思ったのは私だけでしょうか。
ちょっと脱線してしまったけど、当たり前のように行なっている行為が、必ずしも科学的に検証されている行為ではないのが現状。経験則に基づいているものも多いと思う。その経験則の積み重ねが実績をつくることも想像できるけど、その情報が誰でも手に入れられる形で残っているか?というとそうでもないらしい。
この間の診療報酬改定で、改定のための根拠を探すのに苦労したと厚労省の人が言ってたな〜…というのを思い出した。
そして経験則はもちろん大事だと思うけど、そこで通用したからといって、万人に通じるものとは限らない。親子や夫婦で同じものを食べていても、身体へのリアクションが違うことはよくある。
まぁ、最適解を求めることが全てではないけどね。
6. とりあえず、私ができそうなこと
ちょっと長くなっちゃったので、ここまでの流れをざっくりまとめるとこんな感じ。
良くも悪くも免許は免許。車の免許と同じようなもん。その免許を持ってる人だけが出来る仕事をしないといけないな、と思う。
当面の目標には学位を取ることしかなかったんだけど、ここ最近モヤモヤが凄すぎたので、こうやって栄養士としての当たり前を見直す作業をすることにしてみた。その上で、栄養の知識がある人ができることは何か、栄養士が出来て栄養の知識がある人が出来ないことは何か、改めて自分に問うてみている。
あと、前職の経験で「実績を残す」仕組みづくりは出来そうな気がしている。ちょびっとだけ行政とか病院で働いていたことがあるんだけど、そこでは数字を残すってことをあんまりしていなかった。というか、その発想すらなかった職場だった。
いや、食材の発注したり、栄養価計算したりする過程では数字を扱いますよ。でもそれのこと以外を数字で管理していなかった。かといって質的な情報が残っているかというと、それも怪しいのかな〜という感じ。栄養士ってペーパーワーク苦手では?と思ってしまう。全員ではないけどね。
私は性格的にも、経験的にもそういった「残す」作業は割と得意だと思う。まぁ、あの規模の調査介入事業をやってたらそんな力もつくよな、って感じではありますが…。あとは実際にどうやるかなんだよね〜。ちょっと前にフリーランスという働き方ってコラムを書いたけど、スキルの棚卸しをしたところで筆が止まってる。
少し時間もできたことだし、改めてじっくり考えてみなくては。
Photo by Natasha Spencer on Unsplash
ここから2021/12/04追記。
最後、書いてることが酷いぞ。もっと言い方を考えるんだわたし。
”数字を残す発想がない”というのは酷い。リスペクトがない。
”栄養士ってペーパーワーク苦手では?”主語も大きい。酷い。面と向かって言えないよね?そんなこと。
当時の恨みつらみを吐き出しただけじゃないか。
ごめんなさい。
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