【文献】神経モビライゼーションと自律神経の関係
アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏 より
自律神経の働きと理学療法士による介入の貴重な論文を見つけたのでご紹介させていただきます。
正中神経に対して、2つの種類の神経モビライゼーションを行い、前と後で神経の働きを調べる研究。
2つの種類の神経モビライゼーション
1.神経にテンションを加えるもの
2.神経をスライドさせて末梢と中枢方向に交互に動かすもの
この2つの介入をランダムに選んだ対象者に対して行い、以下の二つのポイントで評価。
・正中神経への電気信号の伝わり方
検査方法(DSSEP):頭皮に電気刺激を加えて正中神経で信号を拾う方法
・自律神経機能:驚いた時の手の汗の出方
検査方法(SSR):皮膚交感神経反応というもので驚いた時の手足の発汗反応を調べる方法
この二つを神経生理学的に検査することで、末梢神経と自律神経の働きを調べている研究です。
研究の目的
✅ 正中神経と自律神経機能の神経生理学的パラメーターを調べ、神経モビライゼーション技術のスライディングとテンションの効果を比較することを目的とした研究
研究結果の概要をざっくりとお伝えすると
研究の簡単なまとめ
✅ 正中神経にテンションをかける神経モビライゼーションは、神経生理学的変数に悪影響を与える可能性がある。したがって、末梢神経に対してテンションをかけることは避けるべきだということ。
✅ 神経をスライディングさせることは、皮膚交感神経の反応(振幅)を減少させることに加えて、潜伏期間の延長が認められた。したがって、神経スラディングが交感神経抑制効果を持っている可能性があるということ。また、その治療効果は治療の1週間後まで認められた。
この研究における具体的なスライディング(グライディング)の方法は以下のようなものです。
神経スライディングモビライゼーション
この技術は、神経可動域を増加させることを目的としていました。このテクニックは、同時に実行される 2 つのアクティブな動きで構成されます。
(1) 正中神経を遠位に負荷するための肘の肘伸展、および近位に神経系を降ろすための頸椎の (2) 同側側方屈曲。仰臥位で手首と頭/首をニュートラルな位置にして、肩を約90°外転させ、肘を90°に曲げました。
次に参加者は積極的かつ同時に肘を伸ばし(45∘まで)、首を同側に横に曲げ(〜45∘まで)、次に肘を90°屈曲に戻し、首を反対側の側方屈曲の45°に戻し、肩を90°に維持した。これらの動きの組み合わせは、正中神経の最大のスライディング (10.2mm) を可能にすることが報告されています。
1 サイクルあたり 6 秒のリズムでの 10 回のスライド動作の 4 つのシリーズと各シリーズの間に1 分間の休憩が行われました。
この論文の研究結果の一部の翻訳を載せておきます。
2つの神経モビライゼーション後の神経の反応結果
神経モビライゼーション(NM) にて、テンションをかけると、C6、C7、C8、および T1 の皮膚の振幅が大幅に減少したことが示されました (𝑝<0.005)。グライディングNM グループの交感神経皮膚反応は、テンション NM グループと比較して、振幅が小さく、治療後の潜伏期間が延長されました (𝑝<0.05)。対照的に、偽治療グループの参加者のDSSEPおよび皮膚交感神経反応に有意な変化は観察されませんでした(𝑝> 0.05)。
結論
✅ テンション NM は、SSR の振幅が増加するだけでなく、テストされた DSSEP のピークツーピーク振幅が大幅に減少することです。このことは、テンションをかける神経モビライゼーションは、神経の神経生理学的変数に悪影響を与える可能性がありました。したがって、末梢神経系へのストレスや負担を増加させる現在のパラメータで NM を緊張させることは避けるべきです。
✅ グライディングNMにおいては、潜伏期間の増加とSSRの振幅の減少は、神経滑走が交感神経抑制効果を持っていることを示しています
[研究結果の詳細]
テンションNMでは、C6、C7、および C8、および T1 の DSSEP 振幅が、ベースライン測定からポストまでにそれぞれ 27%、27%、29%、および16%(𝑝<0.05)大幅に減少したことが示されました。介入測定。同じ時間間隔で、ニューラルスライディングは、C6、C7、および C8、および T1のDSSEP振幅をそれぞれ7%、44%、27%、および27%大幅に増加させました。対照群では、C6、C7、C8、および T1 の DSSEP がそれぞれ 4%、6%、0% 増加し、1% 減少しました。最初の介入からフォローアップ測定まで、テンショニンググループは、C6、C7、C8、およびT1のDSSEPの振幅がそれぞれ0%、3%、4%、および5%減少したことを示しました。一方、スライドグループは、同じ時間間隔で、それぞれ0%、6%、24%、および6%の増加を示しました。対照群の振幅の減少は、0% から 4% の範囲でした。
グライディングNM グループの交感神経皮膚反応は、テンションNMグループと比較して、振幅が小さく、治療後の潜伏期間が延長されました(𝑝<0.05)。グライディング群では、ベースラインから治療後の測定値までSSR振幅が25%減少し、治療後からフォローアップ測定まで6%の増加が見られました。潜伏期間は、ベースラインから治療後の測定までに30%増加し、治療後から追跡測定までに6%減少しました。緊張グループでは、振幅はベースラインから治療後の測定値まで38%増加し、フォローアップ時に変化はありませんでした。潜伏期間は、ベースラインから治療後までに 35% 減少し、治療後からフォローアップ測定までに 12% 増加。
[文献]---------------------------------
Comparative effects of tensioning and sliding neural mobilization on peripheral and autonomic nervous system function_ A randomized controlled trial . Hong Kong Physiother J .2022 Jun;42(1):41-53.
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このような詳しい研究がたくさん集まってくることで、自律神経に対してどのような方法で介入することが最も効果的か、かつ、悪化のリスクを減らすことができるのか、を知ることができますね⭐️
最後までご覧いただきありがとうございます🍀
アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏より
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会場 南魚沼市広域働く婦人の家 2F軽運動室
講師 理学療法士 及川文宏
一般社団法人日本アレルギーリハビリテーション協会
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