池袋サウスゲートの愛憎
JR池袋駅の南改札を出ると、構内を圧迫する煤けたクリーム色の円柱が目につく。
円柱の前には待ち合わせする人。立ち止まって携帯の画面を追う人。
一か所だけ人の流れが淀んだ円柱の前には、三人の警察官に押さえ込まれて足を投げやりに放り出した作業服の少年。
警察官の後ろには棒立ちする無表情な警備員。
その前を不二家のエクレア3個入りみたいなファッションの女の子たちが笑いながら通り過ぎ、タイトなスーツのビジネスパーソンが大きめの手振りで何かを携帯の向こうの取引先に伝えながら彼女たちを追い越していく。
円柱がなければ、群像劇の場面のようにも見えるのかもしれない。
円柱のおかげで、彼らは誰一人として同じ物語に交わることなく過ぎ去る。とくに珍しくもないターミナル駅の日常。
東京という街で、僕がいちばん好きなのは、無数に行き交う人の誰もが「何か」に向かって「画面」の中を通り過ぎるところだし、僕がいちばん違和感を感じるのも行き交う人の誰もが「何か」に向かいすぎてるところだ。
こういうのを「愛憎相半ばする」というのだろうか。わからない。
とりあえず、この街で飲むタピオカミルクティーは嫌いじゃない。