客がいないからすべらないって名言が深すぎた
さすがにちょっと大脳のウェルニッケ中枢とかが煮詰まり気味だ。
人より動物とか木とかが密な里山で生活してるし、原稿ずっと書いてたら引きこもりが平常運転だから、特に生活パターンが変わったわけではないんだけど。
それでもやっぱり、基本、ちょっとした移動が好きな種族なので、ほぼ村から出ない生活ってちょっとずつ何かが浸蝕される。林道を歩いたり、作業で山に入ったりはしてるけどね。
たぶん不要不急が好きなんだと思う。無駄なこと。大事じゃないけど大事なこと。でもまあ、工夫はできる。ただその工夫するための時間が足りないだけで。
自分の中の不要不急は大事。無駄っちゃ無駄だけどいい時間だったな。そんな時間をちょっとでも持ってたい。
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と思ってたら、いいのが始まった。春風亭一之輔師匠の落語ライブ。
これ、ほんと師匠には申し訳ないけど、もしこんなことになってなかったら観られてないやつ。
本来なら4月21日から10日間、東京・上野の鈴本演芸場でトリを務める予定だった一之輔師匠。
それが今回、寄席そのものが休席になってしまったので、それだったらと、トリとして上がる予定だった時間に合わせ午後8時10分から午後9時まで10日間連続で落語を生配信してくれてるんですね。人間万事塞翁が馬だ。
昨日の生配信も陳腐な表現を許されるなら神回だった。しかも好きな粗忽物。ほんと、え、落語? なんて思ってる人ほど観て。裏切られるから。
噺ももちろんおもしろいのだけど、なんていうか、こんな状況だからか一之輔師匠という「人間」がおもしろい。とても失礼な表現かもしれないのだけど。
なんだろう。基本、人間って変じゃないですか。でも、このご時世だからみんな一応「ちゃんと」しなきゃいけない。いや、もちろん命を守る行動レベルではちゃんとするし、ちゃんと考えるのあたり前。僕もしてます。
でも「ちゃんと」に収まらない世界も人間の世界にはあって、そこにいろんな味わいというか人間のおかしみも哀しみも溢れてるんだけど、いまはそこが出し辛くなってる。
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そんなときに一之輔師匠が「人間の話」してるの聴くというか観ると、なんか安心できるんですよ。
あと、師匠的にはこういうかたちでまとまって生配信するのっておそらく初めての試みで、だからなのか全力。お客さんがいないからやり辛いかと思いきや関係ない。「客がいないからすべらない」っていう名言まで。
これ、何気に「深い」と思っていて。客がいないからすべらないって自虐にもとれるけどそうじゃないと思う。
落語家にとって寄席で笑ってくれる客がいないのは本来、願わない状況だけどそこをどうこう言っててもはじまらない。関係なく全力でやる。むしろ、そこには自分しかいないからいつも以上になんかすごいもの出せるし、一之輔師匠は出してました。
それって、落語家だけじゃなく自分やどんな仕事でもそうだなぁと。
いま大変っちゃ大変。いろんなものが消滅したり制限かかってる。もしかしたら仕事が飛んじゃうことだってある。けど、そこでも「客がいないからすべらない」ができるんじゃないか。いろんな実験とか。
いつもなら「お客さん」を気にしてそこまでできないことができたり。みたいなことも、ふと思った楽しいし学びもある不要不急な時間。
気になる方はYouTube 春風亭一之輔チャンネルで
◎個人的に神回だった「生配信 第二夜」
※アーカイブの本番は5:00のところから始まります。