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お遊戯会

記憶にある最初のせつない出来事
幼稚園のお遊戯会での合奏で
小太鼓担当になってしまったこと。

4才から10才までの間
第2次ベビーブームだった頃
かなりなマンモス団地に住んでいた。
団地内にプールがあって、運動場があって
集会所があって、スーパーがあって
バス停やタクシー乗り場があり
子ども達が通う幼稚園があった。
もうすでにひとつの町である。

幼稚園では年に一度、秋、お遊戯会が催され
たくさんのお母さん達が観覧にやって来る。
合奏部門の花形は、縦型の鉄琴。
それは羽子板のような形で、歩きながら
手に持って演奏できるようになっている。
鉄琴の部分はシルバー。
音は高音の軽やかな金属音で
鳴るたびにキラキラキラキラキラ
とお星さまが舞っているようだった。
鉄琴の左右脇上部にはカーテンのタッセルの
ようなものがフサフサとぶらさがっており
これがまた、下界のものとは一線を画す。
その様は鼓笛隊の超エリート級の花形で
女の子達のあこがれで
当然、わたしもその一人だった。
何なら、お遊戯会でその羽子板を手に持ち
鼓笛隊の先頭に立ちながらキラキラキラ〜と
星を撒き散らしている妄想まで出来上がっていた。

どういう間違いでそうなったのかは
記憶にない。
結果、小太鼓である。
小太鼓というのは鼓笛隊の楽器の中でも
その他大勢組になる。
小太鼓組は、花形組が帰ったあとの
教室に居残って
夏の日差しが残った昼下がり
太鼓を肩からぶら下げるベルトの
取り付け方を黙々と練習する。

全てにおいてせつない。


                  fumi



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